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卒後生活への不安
~未内定より不安なこと~


工藤 啓
更新:2010/12/13

卒業論文作成のためのインタビューとして、四年生の女子学生と会いました。自分の言葉でしっかりとお話されるのが印象的でした。しかし、雑談のなかでわかったのは、彼女はまだ就職活動を継続されていることでした。正直、「彼女でも決まらないのか」と思いました。いかに新卒採用市場の厳しさが伺えます。

インタビューは、質問に対する回答の繰り返しで順調に進みました。無事に終了した際、再び、就職活動の話になりました。私は、彼女が語ってくれた言葉に、未内定の先に起こりえる不安を感じ、それが頭から離れません。

「就職先がないことも心配なのですが、大学を卒業して、毎日行く先がない。所属がなくなってしまうことがとても不安です」

大学生であれば、「××大学の工藤です」、経営者を含む企業などで働いていれば「株式会社●●の工藤です」と相手に伝えることができます。学校や企業の肩書きあっての自分、という意味ではなく、“自分は何者か”がはっきりとする安堵感は生きていくうえで大変重要です。

特に、私たちNPO法人「育て上げ」ネットでは、無業の若者にご支援を差し上げていますので、彼ら/彼女らから所属のない苦悩や不安を、これでもか、というくらい聞いています。所属のある自分、行く場所がある自分、やるべきことのある自分。勉強や仕事、人間関係などで苦労することは多々ありますが、それらを失った若者の言葉からどれだけ“所属が安心をもたらすのか”わかります。

この時期の大学四年生や高校三年生といった来年度から「学生」ではなくなる方や、近い将来に社会という場に出られる方々に対し、私たちは「就職支援」をいの一番に考えるかもしれません。ただ、私は学生が不安に思っているのは未内定という状況のみならず、その状況が生み出しかねない不安、“所属の喪失”まで想像力を働かせ、少しでもチカラになりたいと考えています。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1