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再学プログラム
~仲間内での役割を担う~


工藤 啓
更新:2011/03/14

学び直しの機会を不登校や中退経験者に提供する「再学プロジェクト」では、参加者の声を如何に反映させるかがプログラムの充実につながると考えています。以前、参加希望者と共に“何を求めるか”について話し合いの場を持ちました。

ある男性は、「私は人間関係に不安があり、人前で何かを伝えたり、グループでの話し合いの場では言葉が出なくなってしまうんです」と打ち明けてくれました。同じ悩みを抱えるひとも数名いました。

そこで、途中でつまずいてしまった教科・単元の克服を目的とするのではなく、“伝える”こと、“コミュニケーションを取る”ことを目的に、プログラムを一から作り直しました。国語、数学、英語という教科を目的達成のための「手段」と捉え直し、ひとつの問題や課題に対して二人、三人のグループになって挑戦する。回答やそこに至るまでのプロセスをみんなの前で発表する機会を多く取り入れました。

すると、数学が得意な参加者はそうでない参加者のサポートを。サポートを受けた参加者は、自分がよく理解できる単元をそうでない参加者に教える、いわば相互扶助的な空間がプログラム内に生まれるようになりました。また、勉強そのものは苦手でも人前で話すことが苦にならない参加者が、グループ発表では代表者として前で素晴らしいプレゼンテーションをする光景も見られました。

前回でも書きましたが、不登校や中退経験者は「学業不振」「学校不適応」を理由に挙げています。勉強が苦手であれば、得意な人間がサポートする。グループ代表として発表をしっかりすることで、仲間内での役割を担う。その繰り返しのなかで気がつくと参加者それぞれが打ちとけ合い、互いを尊重してチームになっていく。そんな風景を眺めていると、もし学校や教室という空間で、彼ら/彼女らが役割を担う機会があれば、「コンプレックスです」と過去を振り返って言うようなことにはならなかったのかな、と思ったりもしました。

まだまだ始めたばかりのプログラムではありますが、ここで得られた知見を広く学校の先生方とシェアすることで、教育という分野に貢献していきたいと考えています。

参考:内閣府「子ども・若者白書」(平成22年版)
http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h22gaiyoupdf/index_pdf.html

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1