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地震のとき若者は
~情報を届ける~


工藤 啓
更新:2011/04/18

2011年3月11日15時前、三陸沖を震源とする巨大な地震が起こりました。いわゆる、東北地方太平洋沖地震です。私は事務所の自室でパソコンを前に仕事をしていました。小さな揺れは徐々に大きくなり、ビル全体に軋むような音が響き渡りました。すぐに外に出て状況を確認し、社員などを隣の駐車場に移動させました。何よりも人命第一、安全最優先です。

各事業所の状況を確かめようにも固定電話も携帯電話もつながりません。少し揺れがおさまったところで机に座り、パソコンの画面を見るとSkype(スカイプ)—インターネットを経由した通話・通信機能—で社員の「いまパソコンの前にいますよ」というマークが点灯しているのに気が付きました。

すぐにそれぞれの社員をインターネット上で集め、現在の状況を集約。それぞれがどのように行動すべきかを指示しました。私はテレビの情報をもとに話を進めていましたが、いくつかの事業所にはテレビがなく、テレビ画面を見ながら話をする私の言葉がうまく伝わりません。

そのとき、ある中学生がテレビ画面の前に一台のカメラを置きました。カメラをUstream(ユーストリーム)という誰でも無料で使える動画共有サイトとつないだのです。インターネットさえあれば地震情報について放送するテレビ画面が誰でも見られるようになりました。1,000人、2,000人と視聴者が増え、すぐに数万人規模にまで膨れ上がりました。

そこには単身赴任や出張で海外に駐在する日本人の方も多く、家族や地元の安否を確かめるべきパソコンの画面にかじりついているようでした。たったひとりの中学生が国内外へ地震情報を伝達したのです。画面向こうの“誰か”からは「日本の情報が入って助かった」「外にいてもテレビ情報が取れてありがたい」というメッセージであふれました。

その中学生は誰だかわかりません。少なくとも有名になりたいからといった功名心からの行動でないことは確信を持てます。新しいテクノロジーを当たり前のように活用し、困っているひとのために悩むことなく行動する。彼が届けたのはテレビから流れる「情報」のみならず、何が起こっているのかすらわからないで不安に陥っているたくさんのひとびとの「安心」を届けたのだと、私は思います。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1