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セーフティーネットとしての高校
~給食が唯一の栄養源~


工藤 啓
更新:2011/06/06

私が通っていた都立高校は「お弁当制」で、毎朝、母親が作ってくれるお弁当を持って学校に通っていました。成長期でしたので、お弁当はだいたい二時間目と三時間目の間の休み時間に食べてしまい、お昼は購買で買ったパンなどでお腹を満たしていました。自宅を出るとき、リビングの机にお弁当が置いてあるのは“当たり前”でありましたし、朝ご飯や夕食も当然のように準備されていました。自らの食生活、栄養が脅かされるような経験はありませんでした。

先日、某定時制高校に招かれ、学生の前でお話をさせていただきました。事前の打ち合わせのため少し早めに到着すると、校長先生が「せっかくですから」と給食を食べさせてくださいました。給食なんて小学校以来でしたし、元来、好き嫌いの激しい私は、自分が食べられないものがでませんようにと祈るような思いでしたが、幸運なことに食べられる食材ばかりで、また、とても美味しかったです。

副校長先生と具体的な打ち合わせに入る前に、学生にとっての給食の意味を教えていただきました。それは多くの学生にとって給食が「唯一の栄養源」となっていることです。さまざまな事情はあると思いますが、自宅で食事が出てこないとか、カップラーメンやコンビニ弁当だけを食べている、また、保護者から昼食代などをもらっていても、日常生活で使うお金に充当するため、昼食を取らないで夜、学校に来る生徒もいるそうです。

残念ながらこれが見えざる日本の現状です。当たり前のように朝食やお弁当、夕食が出される家庭がある一方、給食が命綱となるような生活をしている10代がいる。栄養学的なことはわかりませんが、お腹がすいたままであったり、十分な栄養を摂れなければ、授業に集中することも、安心して学校生活を楽しむこともできません。

選挙権がなく、制度立案に参画することのない高校生がこのような現状を変えることはできません。だとすれば、それができる私たちが、セーフティーネットとしての学校の実情を理解して、学生が安心・安全に学校生活を送ることができる社会を創っていかなければなりません。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1