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セーフティーネットとしての高校
~学力やキャリア支援だけではなく~


工藤 啓
更新:2011/06/20

教育関連の政策審議会に参加をすると、どうしたらスムーズに学校から「働く(職業社会)に移行することができるかについて議論を交わすことがあります。「キャリア教育」の文脈で、発達段階に合わせた職業意識の啓発や職場体験の重要性に話が傾倒しがちです。同様に、専門学校や大学への進学希望者が、自らの将来を見据えて進学先が選択できるよう何をすべきかが語られます。

しかし、進路多様校と呼ばれる、実際は進学者が少なく、卒後は就職をするか、進路未決定のままである学生が多いところでは、学力を身に付けることや、キャリア形成の支援だけではうまくいかない実情があります。

虐待やネグレクト、経済的困窮、障碍や“こころの病気”などを患っていたりと、学生であっても抱えている問題が社会人のそれと変わらないこともあります。いかに充実した教育指導やキャリア形成支援であっても、学生が個々に抱える“その他”の課題も併せて解決できる仕組みが準備されなければなりません。

私はそれらすべてを学校がやるべきだとは考えません。そこまで教員に課すのは酷というものです。平成22年度全国都道府県教育長協議会第2部会の基礎調査「地域の教育力を活用した学校支援施策のあり方」では、回答を得られた134課程(全日制課程128校、定時制課程6校)のうち、企業やNPOが提供する学習支援プログラムを活用したことがあると答えた学校は46.3%と約半数に上り、実施評価も「とてもよかった」「よかった」で96.8%と高くなっています。

外部リソースの活用は今後も発展していくと思いますし、ぜひ、導入していっていただきたいと思います。同じよう、せっかく外部リソースを活用するのであれば、学習/キャリアに限らず、学生が抱えている学外の課題に関しても、うまく外部リソースを活用していくことが望まれます。必要であれば学生が自らそこへ行けばよい、というだけでは課題解決は進みません。やはり、彼らがいる場所「学校」という場を拓くことで、より安心して学生が十分なサポートを受けられる体制を作るべきでしょう。

すでにさまざまな支援を行う現場では、「来る、を待たない」ことがキーワードになっています。来られるのであればまだいい。全力でサポートする。しかし、来られないのであれば行くしかない、という考え方が否定されることはないでしょう。小学校や中学校に限らず、ほとんどの学生が進学する高校もまた、「来る、を待たない」を実践できる唯一無の場所です。学力やキャリア支援に限らず、学校と外部が“学生のために”つながることが重要なのです。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1