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人前で話をするのが苦手
~他者に迷惑をかけない~


工藤 啓
更新:2011/07/04

大勢の前で自分の意見を述べたり、自己主張することが苦手だという若者がいます。実際に会って二人で話をしてみれば、しっかりと自分の意見を持ち、それが私に伝わります。「ちゃんとできているじゃん」と言っても、なかなか納得してくれません。かたくなに自分はできないと言い張ります。

どうしてそれほど苦手意識を持つのか聞いてみると、「人前で話をすると緊張する」と言います。単純な“慣れ”の問題かとも思うのですが、もう少しじっくりその理由を聞いていくと、緊張そのものが苦手意識の源泉ではないことが見えてきます。

ある20代の男性は、「自分の話などみんな当然のように知っているかもしれないし、聞いているひとにまったく価値がないかもしれない。そう思うと怖くなって何も言わずに他のひとの話を聞いている側に回ることで、迷惑をかけないことを選んでしまうんです」と言います。

他にもこんなことを言う女性もいました。「何かを話すのはいいのですが、私の話に対して質問とか反論を受けたくないんです。質問に答えられないかもしれないし、反論されてしまうと攻撃されているというか、自分自身を否定されているように感じます」。

自分に自信がない。自分の話に価値がないのではないか。彼らに共通するのは自己評価、自己肯定感がとても低いということです。また、それと比例するかのように、他者への評価を高く見積もり、自分は取るに足らない人間であるということに結論づけてしまいます。

これは何も私が出会う若者だけに突出した傾向であるとは思いません。高校生や大学生にも見られることがあります。特に、会場質問では“一番目の挙手”までにとても時間がかかります。ひとり目の質問が終わり、何となく大丈夫そうだという雰囲気ができると、方々から手が挙がってきます。本来は自分自身が聞きたいこと、知りたいことを聞く“自分のための”機会であるにもかかわらず、何となく全体の調和を乱さぬよう、他者を意識した行動が見て取れます。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1