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人前で話をするのが苦手
~客観的な“できている”で変わる~


工藤 啓
更新:2011/07/19

人前で話をすること。自分自身の考えを伝えることが苦手だという若者のために連続講座を開催しています。講座の一回目に自己紹介(3分)フリートークの機会を作り、その“でき”について、自己評価と講師を含む他者の評価をマークシートで出してみます。

結果は面白いように同じ傾向になります。大きな声で話せていたか。一人ひとりに視線を配れていたか。話すスピードは適切であったか。内容は具体的でわかりやすく話せたか。話をした本人の自己評価は軒並み低く、彼(または彼女)に対しての周囲の評価は高くでます。

終了後に他者からの評価を見せると、自分では全然駄目だと思っていたのにこんなにも評価が高いのかと驚きます。実は私も人前で話すことが得意ではありません。元々、滑舌(かつぜつ)が悪く、特に「さ行」が苦手です。また、緊張すると早口となり、滑舌の悪さと相まって相手に伝わらなくなってしまうのです。さらによく話が脱線して、本線に戻らないまま次のテーマに行ってしまうこともあります。

それでも講演後のアンケートを拝見して、「役に立った」とか「時間が短く感じた」というコメントを見ると、ほっとしますし、自信が付きます。次の機会にはもっとうまくできるよう頑張ろうと思います。

それと同じように、自分自身の評価が高くなくとも、話を聞いたひとびとの客観的な“できている”という評価があれば変わります。「結構、いい評価ということはできているってことですかね? どこを直したらもっとよくなりますか?」と前向きな質問をもらいます。たった数十分前とは顔つきすら変わっています。

もちろん、できていないのに評価項目を高くすることは本人のためになりませんので正当に評価しますが、多くの場合、本人はできてないにチェックを付け、周囲はできていると判断します。大切なのは、その時点でできているかどうかよりも、自分が思っているほと周囲はできていないとは考えておらず、むしろ、高い評価を付けていることを、客観的な指標と共に、話し合うことなのです。そして、いまできているレベルを向上させるためにどこを改善すべきかを確認し、次回からの講座に活かしていく。いわゆる、PDCAサイクルを回していくのです。

講座では最後のプレゼンテーションのときのみ、普段は関わらないスタッフも聴衆として参加します。そして参加者が人前で立派に発表している姿、成長に驚きます。自己肯定感の低い若者にこそ、客観的な“できている”が重要なのです。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1