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人生に区切りはない
~3月31日は誰のものか~


工藤 啓
更新:2012/05/21

保育園卒園から小学校入学、中学校卒業から高校入学、大学卒業から社会人1年目など、3月31日と4月1日ではがらりと世界が変わります。一方、社会人となると4月1日からまったく新しい生活になるようなことが減ります。社内異動や転勤、留学や転職なども考えられますが、自分も周囲も一同に新しい環境に身を置くようなことはありません。

私たち、NPO法人育て上げネットでは高校に社員が伺って、先生と共に生徒一人ひとりの学校生活や進路に向き合っています。ある高校生は学業と恋愛のバランスで悩み、ある高校生は学校生活に馴染めず苦労しています。

そのなかでも、もっとも大きな相談支援となるのが卒業後の進路についてです。3月31日までは、いま在学している高校の在席生ですが、4月1日からは所属が高校ではなくなります。これまで3年間当たり前であった環境−毎日登校する場所、挨拶をするクラスメート、汗を流す部活など−はなくなってしまうのです。卒業後の進路を決めるということは在学時最大の山場でもあるわけです。

さて、この3月31日というのはそもそも誰にとって重要なのでしょうか。生徒でしょうか、保護者でしょうか。タイトルにあるよう、人生には区切りがありません。1年は1年として時間が過ぎ去るだけです。ただ、社会や大人が何らからの便宜上の理由で区切っているだけなのです。その区切りにすべての学生や若者が合わせる必要もありません。

学校の先生がつらい立場なのは、3月31日以降は卒業した生徒と密にかかわれる時間が取りづらいことです。また、進学率や就職率が重要視されるようになれば3月31日までに“結果”を残さなければならないというプレッシャーにさらされます。だから何とか卒業を迎えるギリギリのところで次の進路が決まるよう生徒に寄り添い、サポートしていきます。

もしかすると、個々人のペースに応じた道(進路)に進んだ方がよいのかもしれません。3月31日の時点で4月1日から働く準備ができていなくても、7月10日には準備が整う生徒もいるでしょう。しかし、先生はなかなか4月1日以降にかかわることができないことを知っているため、その生徒の将来を考えれば考えるほど進路決定を焦らせてしてしまうことがあるそうです。

繰り返しますが、自らの人生は誰かによって区切られるべきものではなく、1つの道として過去から未来へと続きます。私たち大人は、私たち自身が人為的に作った区切りを軸にして子どもや若者に接しているかもしれません。切れ目のないサポートとは言われますが、子どもや若者の立場に寄り添った“切れ目”とは何かを一度深く思考する必要性があります。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1