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フォローアップ
~相談は向こうからやって来ない~


工藤 啓
更新:2012/07/02

先日、オフィスでデスクワークをしていると、社員が手分けをして電話をかけていました。電話の相手先は、育て上げネットの就労プログラムを経て自立した若者たちです。時折、暇になると顔を出す卒業生もいますが、一年に一回、二年に一回程度しか合わない卒業生が大半です。

彼ら/彼女らも仕事で忙しく、育て上げネットに来る前と異なり、友人や恋人ができたり、休日や祝日も忙しく活動しているため実際に膝を突き合わせてコミュニケーションを取る機会は限られています。だからこそ、問題なく元気でやっているかどうかを知るために、こちらから連絡をしているわけなんです。

当たり前のことですが、私たちはいつも、「もし何か困ったことや悩みがあったらいつでも連絡してください」と卒業生に伝えています。どんな小さな悩み事であっても、共に考え、乗り越えて行きたいと考えています。しかし、時には「実は仕事を辞めてしまいまして…」とか、「転職をしたのだけれど職場の雰囲気に合わなくて苦しいです」という声にぶつかります。

いつも私が思うのは「なんでもっと早く連絡くれなかったんだ」ということです。悩みや不安を一人で長期間抱えることで状況が好転することはあまりありません。むしろ、長期化させることで物事が悪化することもあるわけです。

一方、連絡をしてこない卒業生は、「言わなかった」のではなく「(言いたかったが)言えなかった」のだと言うわけです。この「言えない」ということが、卒業生のフォローアップが難しい所以です。感謝の気持ちが強ければ強いほど、卒後の進路で躓いている自分を見せることはできないと考える傾向にあります。

「何かあったらいつでも相談にのるから連絡をくれよ」という言葉は、これから大海原に飛び出す若者にとって勇気を与えますが、フォローアップの意義を考えたとき、私たちは彼ら/彼女らにどうアプローチしていくべきなのでしょうか。少なくとも、何か困ったときに向こうから連絡が来ることだけを前提としたフォローアップは、その目的を十分果たせそうにはありません。だからこそ、工夫や仕組みを作り、“若者自身の状況”を知ることができるフォローアップ体制を構築しなければならないのです。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1