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進学と奨学金
~家庭内でお金の話をするハードル~


工藤 啓
更新:2012/11/26

1955年の大学進学率は約8%でしたが、2009年の統計では50%まで上昇しています。短大や専門学校を合わせると70%を超えるひとが高校を卒業した後に進学しています。高校を卒業しても、もっともっと学びたいことがあるのは素晴らしいことだと思います。他方、その「学ぶ」こと、「将来の可能性を拓く」こと、を目指して進学したことが、逆に、学生を苦しめている現状を危惧しています。

今現在、大学生の2人に1人が奨学金を受けて大学に通っています。

日本では、進学に係る費用の多くを家庭が負担してきました。しかし、家庭の所得が減少傾向にあり、また、先の見えない社会状況のなかで、子どものために学費を捻出することが難しくなっています。その一方で、国立大学、私立大学共に、授業料や入学料は高止まりをしています。進学希望者の増加と学費負担の困難さが、奨学金を受ける学生の増加につながっていることは想像に難くありません。

奨学金には、無利息の「第一種奨学金」と、利息を付して貸与する「第二種奨学金」があります。奨学金を活用する学生の多くは第二種奨学金を使って大学生活を送っていますが、誰でも借りられるのではなく、そこには人物、健康、学力、家計などを見る選考があります。

そのために必要なのは、高校時代の過ごし方ですが、私はここに難しさを感じています。仮に、家庭の経済状況が苦しくても、奨学金を借りて進学をしたいと思った場合、中学三年生または、高校一年生という早い段階で、家族と進学資金を話し合わなければなりません。しかし、日本ではあまり家庭内でお金の話をすることはなく、逆に、高校卒業後の進路決定の段階で進学が難しいことがわかっても、奨学金の選考基準を満たしていない可能性があります。「もっと早くから知っていれば…」ということになり兼ねません。

奨学金を借りるのは自己責任の範囲という考え方も根強いように思います。しかし、それ以前に、奨学金を借りようと思えば10代半ばで、家族とお金について真剣に話さなければならないわけです。お金について家族と話す文化風土に乏しい日本では、奨学金の受給以前に大きな課題を抱えているように思います。

■日本学生支援機構 奨学金情報

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1