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進学と奨学金
~「重荷」を背負って新社会人に~


工藤 啓
更新:2012/12/10

大学生の2人に1人が奨学金を受給している事実は、大学卒業後、20年近くかけてそれを返済する学生もまた2人に1人いるということになります。利息がない第一種奨学金受給者も、利息まである第二種奨学金受給者も、大学卒業後、20年近くかけて毎月数万円を返済していくことになります。

私は、特に利息付き奨学金は、既に奨学金(scholarship)ではなく、借金(student loan)ではないかと考えています。そして、それが意味するのは、将来の可能性を拓くための進学が、奨学金返済と生活設計が可能である収入を得られる選択肢しか残らない、言わば、将来の可能性を閉じているのではないかと思うのです。

育て上げネットでインターンシップをしている大学生に、奨学金受給者がいます。大学4年間と休学して留学した1年分の費用を奨学金でやりくりしています。とても優秀な学生で、たった1年の初海外留学でTOEIC 900点を獲得するほどです。卒業後は大学院に進学することが決まっていますが、その学費も奨学金を活用する予定です。

きっと卒業後は日本社会をけん引すべく、活躍する人材だと感じていますが、一緒に奨学金の返済について考えました。すると、返済総額は1,000万円を超えています。最初の数年は、毎月9万円近い返済となり、その後の10数年も毎月5万円以上の返済が続きます。

借りたものは返すのが当たり前、と考える方もいると思います。しかし、私が感じたのは“大学院卒業後、それだけの返済と生活を両立させることができるお給料をもらえる企業は限られている”こと。つまり、お金に縛られて進路を選ばなければならないこと。もうひとつは、どこかで返済ができなくなったとき、彼の人生はどうなってしまうのだろうという不安でした。

若い世代に支えてもらうことを前提に作られた社会の仕組み。一人ひとりの若者の負担は増えるばかりです。社会を支える負担に加え、学ぶことで背負った経済的負担。借りたお金を返さなくていいとはいいませんが、次代を担う若い世代に対して、私たち大人−近い将来、彼らに支えてもらう世代−がやらなければならないことがあるのではないでしょうか。

少なくとも、未来を切り開くための進学が、結果として選択肢を狭めていく。こういう現状を変えていけるのは現役の大人であると考えます。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1