66-2

一声かける勇気
~子どもたちにこそ~


工藤 啓
更新:2013/12/02

先日、モノレールに乗って買い物に行きました。自宅から直接駅まで行けるのですが、子どもが乗り物大好きなので、少しだけ遠回りをしました。週末の夕方だったので、特に混雑していることもなく、行きは運転手さんの真後ろの席に座ることができました。大きなガラスの先にはまさに運転席があり、眺めもよい場所です。

楽しかったのか、帰りのモノレールでも最前席に座りたいというので、乗ろうとしていた時間をひとつ送らせて、ホームの一番前に並ぶことにしました。子どもは明らかにウキウキワクワクしています。

少しずつ私たちの後ろにもひとが並び始めました。すると少し近くに母親と二人の子どもが立っています。女性は何か子どもたちに伝えて少し離れた場所に行きました。モノレールが到着し、降りるひとたちを待っていたところ、その二人の子どもは降車する人たちの脇をすり抜け、走って車内へ。そして最前席に座り、母親も後から乗車して確保させた席に座りました。

運よく、もうひとつの席が空いていたので、私と子どもも座ることができました。このとき私が考えたのは、「なんてひどい母親だろう」ではありませんでした。むしろ、あのような行動が誰かを不快にさせたり、危険な行為であることを知らないままにおとなになってしまう子どもたちのことでした。つまり、その子どもたちのマナーが悪いのではなく、何が子どもたちにそうさせているのか。母親がよい悪いではなく、誰も彼らに乗降時はだいたいどのようにひとは行動するのかを伝えるひとが周囲にいないことではないかと考えました。

そこで、二人の子どもたちに少し声をかけました。降りる人がいなくなってから乗ること。並んでいるひとたちに配慮すること。もし最前席に座りたければ少し待って並んだり、座っているひとにお願いをしてみたりすることができること。

子どもたちは素直に受け取ってくれたようで、その後、私の子どもと同じくモノレールから見える景色を楽しんでいました。残念ながら、そばにいた母親からは私にギリギリ聞こえるくらいの独り言で何やらつぶやいていましたが、特に気にしないことにしました。

私は心身ともに強いタイプでもないため、誰に対しても声をあげられるわけではありません。相手によっては怖いなと思います。ただ、おとなはともかく、小学生になるかならないかの子どもたちであれば別です。怒る必要も、叱る必要もなく、「こういうときは○○だよ」と伝えるだけですが、誰からも教えてもらっていないとしたら、将来、困るのは子どもたちであり、それは私たち年長者の役割だと思います。同世代や年配世代に一言いうのは難しいかもしれませんが、10歳以上も年齢が下の子どもたちには、子どもたちの未来のために勇気を持って一声かけていきたいですね。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1