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考え方
~Glass half full/Glass half empty~


工藤 啓
更新:2014/02/17

「Glass Half Full」「Glass Half Empty」という言葉があります。前者は、グラスに半分“も”お水が入っている、後者は、グラスに半分“しか”水がない、と翻訳されたりします。もっと直接的に、前者を楽観的、後者を悲観的と表現することもあります。

物事をどのように見るのかは、それぞれの価値観や考え方によります。正解もなければ、どちらが他方に比べてよいということでもありません。とは言え、楽観的な性格のひとは、傍から見たら完全に追い詰められた状況に見えても、本人は全然そんな気持ちはなく、むしろ自然体で余裕だったりします。そういうひとは半分水の入ったコップを見て「半分“も”水がある」と言うのだと思います。

大学生の就職活動を考えてみたいと思います。だいたい誰もが知っている大手の企業は、春から夏休み前にかけて翌年度の新卒採用を終えます。特定の企業に行きたいと思っていた学生も、大企業に就職したいと考えていた学生も、なかなか内定が出ないと内心焦ってきます。もしかしたら自分が希望している企業では働けないのかもしれない、と考えれば、当然不安になります。

インターンシップをしていたある男子大学生は、新聞記者になりたいと言っていました。誰もが知っている新聞社で働きたいと考えていたわけです。普通の学生であれば、第一希望の企業だけでなく、他の新聞社や全然分野の違う企業でも就職活動します。大企業に入るのは簡単ではないですし、就職が決まらないまま学校を卒業するのも不安だからです。

しかし、彼はその新聞社しか受けないと言うのです。個人の価値観や生き方に他人が口を挟むべきではありませんが、それでも声をかけました。「そこが不採用だったら次どうするの?」と。

すると彼は私に、「国内だけでも200万社以上“も”会社があるんですよ? 選べませんよ。ただ僕はこの新聞社で働きたいんです」と笑顔で言うわけです。大学生の多くが不安と闘いながら就職活動するなか、彼は不安を微塵も感じさせず、結局、希望する企業に入りました。

彼が希望する企業に採用された理由は知り得ませんし、逆に、採用されていなかったらどうしていたのかもわかりません。ただ、ひとつだけ言えることは、200万社以上“も”会社がある(のだから何とかなるでしょ)、と言い切れる気持ちの余裕、その余裕を生み出すための知識や情報を、彼は自ら取得していたことです。友達や先生、周囲が何を考え、どう行動しても動じることなく、自分の軸をしっかりと定めた上で判断と決断ができること。楽観的であることは、生まれつきの性格ではなく、物事を主体的に調べ、自分なりに理解できるようになるための事前調査の結果だったというわけです。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1