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無業社会
~個人と社会~


工藤 啓
更新:2014/07/22

「無業社会 −働くことができない若者たちの未来−」(朝日新書)では、誰もが無業になる可能性を持っており、一度無業になるとなかなか抜け出せない社会を「無業社会」と呼んでいると前回書きました。

共著者の西田亮介さんとは、「できるだけ感情的な部分は切り離して本を作りましょう」と話していました。小・中学校の不登校、高校中退、新卒未内定、会社を離職することなどがあると、なぜか「自己責任」という言葉が出てきて、これらの行為や行動は“そのひとの問題であり、そのひとの責任である”とされてしまいがちです。「問題を個人に矮小化する」と言ったりします。

しかし、誰もが働くことができなくなる可能性を持っています。病気になることもあれば、怪我をすることもあります。一生懸命に就職活動をしても採用されなかったり、会社が倒産したことで仕事を失うこともあるでしょう。これらをすべて個人の問題にしてしまうと、安心して生活することができません。むしろ、一度でも「当たり前」の道から外れてしまったら大変なことになると、慎重に行動し、挑戦することに臆病になっていきます。

例えば、無業になってもすぐに適切で、充実したサポートが在り、すぐに抜け出せる社会になったらどうでしょうか。仕事を失うことに怯えるのではなく、むしろ、安心して物事に挑戦できるのではないでしょうか。「そういう社会っていいよね!」という想いを大切にしながら、どうしたら少しでもそこに近づけるのかをいつも考えています。

そのとき、私が大切にしているのが、なるべく個人の問題で片付けないことです。「何が彼/彼女をそうさせているのか」という視点を持つことで、(広い意味での)社会の不備を見つけ、よい方向に変えていくためには何が必要だろうか、と考えるようになります。実際に、社会に変化を起こしていくことは簡単ではありませんが、個人と社会の関係性がより複雑になっているなか、社会を見る“視点”を複数持つことは、これからの未来を切り開いていく上でとても重要なスキルになっていくと思います。

●「無業社会 −働くことができない若者たちの未来−」
(工藤 啓・西田亮介 著/朝日新書)

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1