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里親のもとからの大学進学
~学費も生活費も自分でまかなう大学生~


工藤 啓
更新:2014/08/04

何らかの事情により家庭での養育が困難または受けられなくなった子どもたちがいます。児童養護施設やファミリーホームという場所が、彼らをもうひとつの「家庭」として支えています。

集団で支える場所の他にも、「里親制度」というものがあります。里親登録をした家庭が子どもたちを自宅で支える仕組みです。だいたい4,000人の子どもが里親のもとで暮らしています。

いま、高校を卒業すると80%近い高校生は大学や短大、専門学校に進学します。その一方で、児童養護施設や里親のもとで暮らす子どもたちの進学率は10%から20%くらいとなっており、高校卒業後に学びたくでも進学がかなわないケースが多いです。

仮に進学をしても、家族のサポートが受けられず、学費や生活費を自ら稼ぎながら学ぶことは難しく、経済的な理由で中途退学の道を選ばなければならない学生も少なくありません。

同じ大学生でも、お小遣いのためにアルバイトをがんばるひとと、家賃や食費など学費を含む生活費をまかなうためにアルバイトをしなければならないひとでは、使える時間や何かあったときの心配事は異なるでしょう。

わざわざ周囲に児童養護施設や里親のもとで暮らしていることを伝えることはないと思いますが、そのような環境にいることを知ってくれる、安心して相談できる友人の存在はとても心強いようです。

先日、里親家庭で育ち、今年度、大学に進学をした若者たちと話をしました。それぞれが学生生活を楽しんでいる一方、やはり、少なからず悩みを持っているようでした。信頼される友人として、もしそのような話を打ち明けられたとしたらどうでしょうか。

私自身も、児童養護施設や里親制度に詳しくなかったため、いろいろ調べました。彼らの悩みを聞いたとき、何か解決策をすぐに提案できる必要はないと思います。それは社会全体で取り組むべきものです。むしろ、友人として力になれることは、そのような環境にあるひとがいることを知り、話を聞いてあげられることです。

児童養護施設や里親制度に限らず、さまざまなバックグラウンドを持ったひとがこの社会にはおり、そのようなことを知っておくことで、豊かな人間関係を作ることができると思います。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1