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里親のもとからの大学進学
~周囲の理解と行動~
児童養護施設や里親から大学などに進学した若者だけではありませんが、生活費と学費をまかないながら学ぶといのは大変なことだと思います。私が出会ったひとたちは奨学金を複数活用していましたが、それらは卒業後に返済が待っているものもありますので、学生生活だけで終わる悩みではないと思います。
ある女性は有意義な学生生活でありながらも、倹約生活をされています。なるべく無駄な支出を抑えるだけではなく、疲れているときも外食で済ませず自炊をするなどしています。いまや2人にひとりの大学生が奨学金を活用していることからも、誰かの自宅に集まって食事をするような楽しみ方は増えてくるかもしれません。
なかなか自らの出自を語りづらいことも多いなか、ある男性は大学の友人に恵まれ、里親出身であることをオープンにして、里親制度をよりよくするための啓蒙活動をしていました。当事者が語ることは勇気がいることですが、周囲の理解と協力があるからこそ前に進めると話をしていました。どのような社会課題も同じですが、解決に際しては、気がついた個人が行動することからしか始まらないのだと思います。
女性の例で伝えたいことは、仲間内で集まるときに、必ずしもお金をかけることだけが楽しさを担保するわけではなく、さまざまな楽しみ方を持つことで、(このケースではお金ですが、それに限らない)既存の楽しみ方ではシンドイと思っているひとも参加しやすくなるということです。
また、男性の例のように、個人的な悩みでも、社会の課題でも、誰かが困っていることを助けられる、そもそも根本的に解決していくためには、それを知った個人が理解に努め、可能な範囲で協力していくことが、その個人や社会がよい状況になることを後押しします。
普段の生活では知り得ないことの方が社会には多くありますが、私自身もできる限り社会的なアンテナを張っていきたいと思います。