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7万9千人が大学を中退
~経済的理由による中退が5人にひとり~


工藤 啓
更新:2014/10/06

先日、文部科学省の調査が発表されました。2012年度に大学などを途中で辞めた学生は2.7%の約7万9千人だったそうです。そして中退理由で最も多かったのが「経済的理由」ということです。中退者の5人にひとりがお金の問題で大学を辞めています。

大学進学にあたって中途退学を前提に進路を考えている高校生はほとんどいないと思います。在学中の生活費や学費を保護者が出すにせよ、奨学金などを活用して準備するにせよ、途中で大学に通えなくなる可能性を考えることも少ないのではないでしょうか。

周囲に大学進学希望者ばかりだと、自分も「大学に進学するんだろうなぁ」と考えます。もちろん、真剣に将来を考えるなかで、大学で学ぶことが重要であるという結論に達することもあるでしょう。しかし、卒業までにかかる生活費や学費について調べたり、先生や保護者と相談している学生はあまり多くない印象があります。

それはお金のことについて普段から話をしないから持ち出しづらい話題かもしれませんし、お金のことを子どもに心配させるなんてよくないと考える保護者から、とにかく「心配しなくていい、何とかするから」と諭されるかもしれません。

学費について心配することもなかったけれど、両親の収入が突然減ってしまうこともあります。仕事を失うことだってあります。将来のことは誰にもわかりません。だからといって、これだけ経済的理由で大学から離れなければならない大学生がいるわけですから、何も考えずに安心して大学に入学すればいいとは言い切れない状況になっています。

家庭の事情はそれぞれ異なりますが、少しだけ大学入学後の4年間にかかるお金のことについて頭の片隅でも考えてみる、ということが大切だと思います。いまは必要ないかもしれませんが、奨学金について調べて、知識や情報を持っておくこともできるはずです。

本来、学びの機会を担保することは社会の責任です。少なくない数のひとたちがそのために努力をしています。一方、残念ながら社会が変わっていくには時間がかかるものが多いです。数か月後や数年後に大学進学を考えているのであれば、まずは進学後の生活費や学費について“気にしてみる”ことだけでも始めてもらいたいと思います。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1