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学部・学科選び、その先
~進学後に迷わない学生は少ない~


工藤 啓
更新:2014/12/01

東洋大学の社会福祉学科で教えることになったとき、真っ先に考えたのが、「高校生時代に福祉分野で活躍することを考え、この学科を選んだ学生は就職活動や将来への迷いは少ないのではないか」ということでした。

私自身は、心からやりたいことがあって学校や学部、学科を選んだわけではなく、むしろ、「そう言えば新聞記者ってかっこよかったな」と思い起こし、それならばとマスコミ系の学部や学科を探しました。高校の時点で確固たるものはまったくありませんでした。

実際に講義が始まってから理解できたのは、社会福祉士という国家資格を目指すコースを選択するのは学生の半分くらいであったこと。もうひとつは、福祉分野の企業や団体に就職したいと考えている学生も、私が想像していたよりもずっと少ない。もっと言えば3年生になっても迷っている学生が多いということでした。

先日、履修した学生に「福祉」という分野と何か他の分野で関心ある組み合わせはどのようなものがあるかということを聞きました。アイディアで目立ったのは、日用品から街づくりまで誰もが暮らしやすい状況を作るための「デザイン」。最先端技術による福祉分野にどう変化を起こしていくのかという「科学」や「IT」。低賃金重労働というイメージがある福祉分野における「雇用」「労働」の在り方などに関心の広さがうかがえました。

第8回の講義では、社会福祉士としてのキャリアや現場での実践についてゲストに講義をしていただきました。その女性は経済を専門で大学を卒業されました。母親を亡くしたことをきっかけに児童養護に関心を持ち、福祉分野でアルバイトをしながら社会福祉士資格を取得するために専門学校に入学。いまは困窮家庭の子どもたちや無業の若者を支援しています。「福祉関係の仕事で活躍するのに資格は絶対ではない。一方で、福祉分野に絞って就職活動をしたところ、(福祉分野の)学位も資格もないことで、採用されないことが多かった」という話もありました。

その日の感想シートでは、「一般企業に就職を希望しているが、いつ福祉関係で働きたくなるかわからないので、国家資格も取得します」というものや、「会社や仕事を変えることはできるということで、いまは決めた道を進もうと思います」と、不安や迷いが吹っ切れたというコメントが多く寄せられました。

いまは将来の生き方や、就きたい仕事につながりやすい学部や、どのような仕事を選ぶにしても使えそうな理由から進学先を決めるような考え方も多くあるようですが、専門職に近い分野を選んだ大学生でさえ、少なくない学生が2年生、3年生で迷うわけです。前編でも書きましたが、進学後、進路に迷わないということは少ないでしょうから、未来や将来を意識し過ぎて選ぶことができないということであれば、いまの興味や関心で進路を選択してよいと思います。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1