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親とのコミュニケーション
~親が聞きたいこと~


工藤 啓
更新:2015/11/24

育て上げネットでは、母親向けの支援事業「結(ゆい)」を行っています。お子さんが学校や職場などでうまくいかなくなり、親子の関係が難しくなったひとたちのご相談を受け、一緒に解決方法などを見つけていきます。

先月、この結の活動が漫画(「子どもがひきこもりになりかけたら マンガでわかる 今からでも遅くない 親としてできること」上大岡トメ、KADOKAWA/メディアファクトリー)になりました。もし少しだけ興味があればこちらのコミックエッセイ劇場にて数話無料で読むことができます。

高校生くらいになると親とのコミュニケーションが面倒になることがあります。私自身は、普通に会話もするけれど、なんとなく自分の考えや価値観について語るのを避けるようになりました。例えば、ニュースで選挙の報道があり、「どこにいれても変わんないよ」と言うと、父親から「それでも投票することに意味があり…」と返ってくる。

いまはそのような返しから話を膨らませ議論したりもしますが、対して深く考えることもなくポロッと言ったことに反応されることがとても面倒でした。面倒なことになるのが嫌なので、差しさわりのない会話で終わらせていたように思います。

それでは親の側がどう思っているのかというと、何もかもを知りたいわけではないようです。大別すると、ひとつは、悩みや問題を抱えていないかと心配なので、「大丈夫そうだ」と思える話を聞きたい。もうひとつは、どんなことを聞かれるのが嫌なのか。何を言われるのがうっとうしいのかが知りたいと言います。

極端ですが、毎日「勉強しなさい」と言われれば、その言葉は聞きたくなくなります。一方、まったく何も言われない、聞かれない無関心の状態になれば「もう少し話を聞いてほしかった」「とても寂しかった」とならないでしょうか。私が出会ってきた若者からは、多かれ少なかれ親に、ああしてほしかった、こうしてほしかった、ということがポツポツ出てきます。

それを親御さんに伝えると、「そう言ってくれればよかったのに、全然気がつかなかった」となります。実際には自分の気持ちを話すことも、相手の気持ちを聞くこともなく、どちらかというと“察してほしい”スタンスであったのかもしれません。少なくとも私自身の経験だけで言えば、聞かれれば答えるけれどそうでなければあえて言うわけでもない、でした。

親は親であるがゆえに、また、自分が子どもと同じ年齢であった頃とは置かれた環境が全然違ってしまっているがゆえに、いろいろ知りたいのです。親孝行しましょうと言いたいわけではありません。ただ、さまざまな事故や事件の情報が耳に届きやすくなっているいま、自分の子どもの身を案じる、心配する気持ちに対して、ほんの一言、二言くらい親が聞きたい、知りたいことを子どもの側から話してみてはどうでしょうか。

■育て上げネット「子どもがひきこもりになりかけたら」コミックエッセイ発刊記念特設ページ

■コミックエッセイ劇場「子どもがひきこもりになりかけたら」上大岡トメ

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1