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前回も書きましたが、マナーに関しては、どうも“若者のほうが悪い”イメージが定着している気がします。以前、とある都市に講演ででかけたところ、大きな交差点で事故がありました。20代前半くらいの若者が運転する車が、横断中の女性をはねました。私の目の前でした。
私は、講演でご一緒させていただく方々と一緒だったのですが、私たちの他、複数名がその場にかけつけました。運転手と車を側道に寄せ、女性の状況を確認し、警察と救急車を手配しました。私は腹部を押さえる女性を見つつ、周囲の方に110番と119番をお願いしました。
私がお願いする前に、近くにいた女子高校生が警察に電話をかけてくれていました。地元の方だったらしく、その交差点を的確に説明していました。付近にいた年配の男性には救急センターへの連絡をお願いしました。その男性も携帯電話を取り出し、ボタンを押し始めたとき、その指を止め、私に言いました。
「急いで会社に帰らないと会議に間に合わないため、この場所に救急車が来るまでいられないから、君の携帯を借りていいかな?」
緊急事態のため、私も深く考えることなく自分の携帯電話を差し出し、その男性が場所などを説明してくれました。私に携帯電話を返すと、スタスタと会社に歩いて向かいました。しばらくして、救急車が女性を運び、警察官が運転手に事情を聞き始めました。
そこにいるよう、警察官に呼び止められ、その女子高校生と待っていたところ、彼女は「私も予備校の授業あるんだけど、もう遅刻決定。でも、あのおばさんが大丈夫そうでよかったよね」と話しかけてきました。
一家の大黒柱である人間にとっては、社内会議は大事な用件です。もしかしたら、絶対に遅れられない状況だったかもしれません。ただ、それは大学進学を目指して一生懸命勉強している女子高校生が通う予備校の授業も同様でしょう。そのとき、会議や授業を選ぶのか、目の前の人間の安否を気遣うのかは個々人の価値観かもしれません。
この出来事だと、会社優先の大人(男性)よりも、授業を諦めた若者(女子高校生)のほうがよく映ります。ただ、逆に会社を諦めた大人と、授業を優先した若者であったとき、周囲(社会)の反応は同じでしょうか。私がちょっと恐れるのは、前者であれば大人は理解されてしまい、後者であれば、若者が非難されてしまうのではないかということです。
マナーや状況判断においては、大人も若者もなく、個々人の価値観に拠ります。それでも、「最近の若者はマナーが悪い」という言葉を聞くことはあっても、「最近の大人“は”マナーが悪い」と聞くことはありません。「最近の大人“も”」はありますが。そういう意味からも、どうも若者は優先的に損な扱いを受けているのではないかと思ってしまうのです。
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工藤 啓
くどう けい
特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)

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