そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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自分のミタメ
~美形と美人~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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私が髪の毛をいじり始めたのは、確か中学校に入学したくらいだっただろうか。制服を着るようになったからだろうか、初恋の女性ができたからだろうか、その理由は忘れてしまいました。それまでは寝癖100%のまま、眠い目を擦って登校していたのですが、朝少しだけ早く起き、髪を濡らし、整髪料とドライヤーを駆使して、自分が納得いくまでガチャガチャやっていました。

いまの中学生を見ると、やはりそれほど意識の変化はないのかなと思います。特に男の子なんかは、“中学デビュー”ですと言わんばかりに、髪の毛のセットが板についていません。きっとこれからもっとお洒落に目覚め、髪の毛だけでなく、洋服や靴、バックなどにも気遣いをしていくのでしょう。眉毛の手入れをしている学生を見ると、私のころよりずっとミタメを気にしているのだなと思うこともあります。

先日、フェイシャルセラピストのかづきれいこさんとお話をさせていただく機会がありました。医療機関と連携し、傷ややけど痕のカバー、それにともなう精神的なケアも行なう“リハビリメイク”の第一人者であるかづきさんに、「最近の若者はとてもお洒落で、ミタメもよいです。私のころとは比べものにならないです」と伝えたところ、こんな話をされました。

「いまの若い方々は、美形であろうと努力をしています。しかし、本当に重要なのはそこに心があること。つまり、外見だけの美形ではなく、心までも磨く“美人”を目指してほしいですね」

思春期にミタメを意識し始めること、つまり、美形になりたいと思うことはとても自然なことです。「最近の若者はミタメが奇抜だ」と言われる方もいますが、かわいい、とか、きれいという感覚、価値観は時代とともに移り変わりますから、奇抜に見えるのも仕方がないかもしれません。

それよりも、同じように綺麗に見えたり、格好よく思えたり、または、奇抜に感じるような外見でも、心の部分はどうでしょうか。個人の感覚や価値観を超え、美形と美人が見分けられると思います。そのとき、美形の若者には心の研磨を、美人には素直な褒め言葉をかけてあげましょう。身近にいる若者のミタメ、それは美形になろうとしているだけでしょうか。それとも心が伴う美人になろうとしているのでしょうか。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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