そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

4-2

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こんな言葉に要注意
~「はい、わかりました。」~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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業務についての指示を出したり、今日のスケジュールを確認したりすると、「はい、わかりました」と返事をくれる若者がいます。私の言葉をしっかりと理解してくれたのだろうと思い、しばらくは自分の業務に集中します。

ふと気が付くと、私の指示とは異なる業務をしている若者、スケジュールにはなかった行動をとっている若者がいます。何をしているのかと聞いてみると、「あっ、いや…それもやろうとしていたのですが…」と言葉に詰まってシドロモドロなどということが案外と多いのです。

指示や確認内容をイマイチ理解することができなかったけれども、恥ずかしくて再度聞き返すことをためらってしまうのであれば、その心情をわからないでもありません。また、初めからこちらの話を聞くつもりもなく、その場しのぎで返事をしているのであれば、注意のしようもあります。

しかし、そのどちらでもなく、「はい、わかりました」といってしまう若者は何を考えているのでしょうか。それは、“こちらから指示やお願いした内容は理解した”ということです。一方、それが必ずしも彼ら(彼女ら)のなかで、こちらが考える優先順位と同等の順位付けをされているとは限りません。

大至急やってほしい旨を、使用する言葉や態度で表現したと思っていても、「自分がやらないといけないこと(やりたいこと)はこれ」と決めてしまっている場合には後回しにされてしまいます。そこで叱ったり、注意したりしても、「だったら、なぜ初めからすぐにやってくれと言わないのですか」と言われて終わりです。

このような状況に出くわすと、「いまの若者はコミュニケーション能力に乏しい」と考えがちですが、実際には、他者との相互理解は以前に比べ直接的になっているからなのです。以心伝心、阿吽の呼吸は昔の話。コミュニケーションのツールが多様化したことで、「言わなくてもわかる」ことは少なくなりました。これからは大人の側も時代の進捗を理解していかなければなりません。

若者自身の考えと他者の考えの相違を埋めるためには、若者の考えを聞いた上で、どれが優先順位の高いもので、それはなぜなのかを説明する必要があります。若者の言う「はい、わかりました」と、こちらが思う「わかってくれたんだ」は必ずしも合致していないことが多々あります。その溝を埋めていくためには、「はい、わかりました」という答えの後に、再確認のコミュニケーションが必要なのです。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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