そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

6-1

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選択するチカラ
~選べないひと~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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困ったとき。迷ったとき。前に進もうとするとき。生活のさまざまな場面で、私たちは選択をしています。お昼はラーメンにするのか、それともコンビニ弁当か。進学か就職か。転職か独立起業か。

深く考えなくても、大きな問題に発展しない選択もありますが、人生を左右するような場面での選択は強烈なプレッシャーがかかります。選択経験に乏しい若年者にとって、進学や就職への選択はとてつもなく大きな心的負担となることがあります。

インターネットの普及などもあり、昔よりも情報が獲得しやすくなった反面、あまりに大量の情報が自己内に流入してしまうために、何も選べなくなってしまうひともいます。ネットの世界では、若者の目指す道での成功談もあれば、その道でうまくいかなかったひとの失敗談もあります。それに加え、その道を選択することを全面的に否定する匿名者の書き込みなども出てきます。

大人が読めば、内容の信憑性はある程度判断できるものもあるかもしれませんが、まさに選択に迷っている若者にとってみれば、すべての情報が宝であり、ゴミでもあるのです。煮詰まってくると、自分の都合のよい情報が信頼度の高い情報であると誤解してしまうこともあるのです。

選べないひとの多くは、当初の目的である“選択する”ことを見失っています。そして、選択するための“情報を集める”ことが目的になってしまっています。重箱の隅々から掻き集めた情報の仕分け作業が膨大なために、そこで立ち止まって動けなくなるパターンが多いように思います。

頭の中では情報の大渋滞が起こっている。前に進めない、つまり、選べないひとに対して、過度な叱咤激励は禁物です。渋滞で進まない車のドライバーが必要としているのは声援でなく、交通整理をしてくれるひとです。

選べない若者も同じで、彼ら/彼女らが求めているのは、当初の目的を再度明確化し、これまでに集めた情報などを整理してくれるひとなのです。大人であれば、自己決定自己責任論で通っても、経験の乏しい若者には大人の手助け。それも、信頼できる大人と膝を付き合わせた“交通整理”が大事なのだと思います。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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