そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

10-1

10-1
夢を持つこと
~前編~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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夢にはいくつかの種類があります。自分にとっては絶対叶えたい願望であり、それをつかむためには努力を惜しまない「夢」。「そうだったらいいなぁ」と思い描くだけで、特にそれに向かって何か行動をするわけではない「夢」。そして、寝ているときに見る「夢」です。でも、なぜか夢を語ることになると、職業(仕事)とリンクしてしまうことが多い気がするのは私だけでしょうか。

小学校の卒業アルバムなどで、「私の将来の夢」というコーナーがあったりします。サッカー選手であったり、花屋であったり、社長であったり。特に指定があるわけではないけれども、大半の子は「夢」と「職業」を同じものとして考えているようです。中学生、高校生ともなると、これまでは「夢」であったものが、「進路」と形を変えて、「職業」として表れてきます。夢と現実の距離がどんどん縮まり、いつの間にか、現実的に達成可能なものしか夢として受け入れられなくなっているのではないでしょうか。

最近の若者は、以前と比べ、夢が持ちづらくなっています。プロスポーツ選手は小さいころから英才教育を受けていたり、10代前半で日本代表に選出されていたりすることがインターネットなどでわかってしまいます。大きな会社の社長の経歴などを見ても、有名な大学や、海外での学位などが踊っています。いまの自分の年齢で、夢や目標となる人物がどのような状況にあったのかが、瞬時にわかってしまうため、諦めることがたやすく、自分ができそうなこと、なれそうなものを模索するようになります。

つまり、チャレンジする前の段階から、自分の夢が到達可能かどうかを判断できてしまうわけです。もちろん、そんなことはチャレンジしてみなければわからないと大人は言うかもしれませんが、実際に若者と話をしていると、大人が良かれと思って話さないリスクを既に知っています。起業のリスク、プロスポーツ選手の引退後の生活、アイドルグループがどれくらい芸能界で活躍し続けられるのか。こうなってしまうと、夢を持つことの是非そのものの問題になり、持たない方が「楽」「賢い」と考えられてしまうのも無理はありません。それは、「夢=職業」と言ったイメージができあがってしまっていることの弊害なのかもしれません。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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