そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

12-1

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若者が問題なのか
~車両内での出来事~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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今月9日、北海道のJR留萌線の秩父別駅で、高校生が車内奥までつめなかったため、26人が乗車できずにタクシーで代行輸送されたという報道がありました。

運転手のアナウンスで高校生がつめなかったことがクローズアップされましたが、その高校生のコメントには「大人が荷物を椅子に置いて動かしもしなかった」というのもありました。事実はわかりませんが、高校生(若者)のマナーの悪さが、事実確認前に先行してはいなかったでしょうか。

電車、たばこ、携帯電話と、さまざまなところでマナーが取り上げられますが、どうも若者に分が悪い感じがします。以前、電車内でこのような出来事に遭遇しました。

電車内で携帯電話を使い、大きな声で話す若者に対して注意をする年配に対して、その若者は怪訝そうな顔をしつつも、携帯電話で話すのを止めたところ、「ピリリー」っと、別の場所で呼び出しサイレンが鳴ったのです。それはスーツに身を包んだ、これも年配の方でした。若者への注意の声が比較的大きかったものですから、車内の人間であれば、誰もがその出来事を知っているにもかかわらず、携帯電話がなった男性は通話のスイッチを押し、話し始めました。おそらく、取引先からだと思います。

それに対して、通話を止めた若者が注意をしてきた男性に、「あいつにも注意しろよ」と電話で話す男性を指さして怒鳴りました。最初に注意をした男性は、通話中の男性にも注意をします。

「あなたも車内で電話するのを止めなさい。あの彼(若者)もそうしたのを見ていたでしょう」

当たり前の感覚を持っていれば、その場で通話を始めることもしませんが、その男性の言葉はびっくりするようなものでした。

「私のは仕事の電話なんだ。あの(若者の)おしゃべりとは違うんだ」と。

次の駅に到着し、注意された男性はばつ悪そうに下車。若者は隣にいた友人と“大人”のマナーに対して文句を言い続け、双方に注意をした男性は呆然としている。そのような出来事がありました。

車内通話をするのは若者が多いというイメージはないでしょうか。車内通話のマナーに対して、おしゃべりか仕事かは関係あるのでしょうか。そして、勇気を持って注意したひとが割を食ってしまう環境で、これから先、同様の状況で再び注意をしようと思うのでしょうか。たった数分の出来事のなかで、マナーについて考えさせられてしまいました。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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