そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

48-2

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セーフティーネットとしての高校
~学力やキャリア支援だけではなく~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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教育関連の政策審議会に参加をすると、どうしたらスムーズに学校から「働く(職業社会)に移行することができるかについて議論を交わすことがあります。「キャリア教育」の文脈で、発達段階に合わせた職業意識の啓発や職場体験の重要性に話が傾倒しがちです。同様に、専門学校や大学への進学希望者が、自らの将来を見据えて進学先が選択できるよう何をすべきかが語られます。

しかし、進路多様校と呼ばれる、実際は進学者が少なく、卒後は就職をするか、進路未決定のままである学生が多いところでは、学力を身に付けることや、キャリア形成の支援だけではうまくいかない実情があります。

虐待やネグレクト、経済的困窮、障碍や“こころの病気”などを患っていたりと、学生であっても抱えている問題が社会人のそれと変わらないこともあります。いかに充実した教育指導やキャリア形成支援であっても、学生が個々に抱える“その他”の課題も併せて解決できる仕組みが準備されなければなりません。

私はそれらすべてを学校がやるべきだとは考えません。そこまで教員に課すのは酷というものです。平成22年度全国都道府県教育長協議会第2部会の基礎調査「地域の教育力を活用した学校支援施策のあり方」では、回答を得られた134課程(全日制課程128校、定時制課程6校)のうち、企業やNPOが提供する学習支援プログラムを活用したことがあると答えた学校は46.3%と約半数に上り、実施評価も「とてもよかった」「よかった」で96.8%と高くなっています。

外部リソースの活用は今後も発展していくと思いますし、ぜひ、導入していっていただきたいと思います。同じよう、せっかく外部リソースを活用するのであれば、学習/キャリアに限らず、学生が抱えている学外の課題に関しても、うまく外部リソースを活用していくことが望まれます。必要であれば学生が自らそこへ行けばよい、というだけでは課題解決は進みません。やはり、彼らがいる場所「学校」という場を拓くことで、より安心して学生が十分なサポートを受けられる体制を作るべきでしょう。

すでにさまざまな支援を行う現場では、「来る、を待たない」ことがキーワードになっています。来られるのであればまだいい。全力でサポートする。しかし、来られないのであれば行くしかない、という考え方が否定されることはないでしょう。小学校や中学校に限らず、ほとんどの学生が進学する高校もまた、「来る、を待たない」を実践できる唯一無の場所です。学力やキャリア支援に限らず、学校と外部が“学生のために”つながることが重要なのです。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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