そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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人前で話をするのが苦手
~客観的な“できている”で変わる~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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人前で話をすること。自分自身の考えを伝えることが苦手だという若者のために連続講座を開催しています。講座の一回目に自己紹介(3分)フリートークの機会を作り、その“でき”について、自己評価と講師を含む他者の評価をマークシートで出してみます。

結果は面白いように同じ傾向になります。大きな声で話せていたか。一人ひとりに視線を配れていたか。話すスピードは適切であったか。内容は具体的でわかりやすく話せたか。話をした本人の自己評価は軒並み低く、彼(または彼女)に対しての周囲の評価は高くでます。

終了後に他者からの評価を見せると、自分では全然駄目だと思っていたのにこんなにも評価が高いのかと驚きます。実は私も人前で話すことが得意ではありません。元々、滑舌(かつぜつ)が悪く、特に「さ行」が苦手です。また、緊張すると早口となり、滑舌の悪さと相まって相手に伝わらなくなってしまうのです。さらによく話が脱線して、本線に戻らないまま次のテーマに行ってしまうこともあります。

それでも講演後のアンケートを拝見して、「役に立った」とか「時間が短く感じた」というコメントを見ると、ほっとしますし、自信が付きます。次の機会にはもっとうまくできるよう頑張ろうと思います。

それと同じように、自分自身の評価が高くなくとも、話を聞いたひとびとの客観的な“できている”という評価があれば変わります。「結構、いい評価ということはできているってことですかね? どこを直したらもっとよくなりますか?」と前向きな質問をもらいます。たった数十分前とは顔つきすら変わっています。

もちろん、できていないのに評価項目を高くすることは本人のためになりませんので正当に評価しますが、多くの場合、本人はできてないにチェックを付け、周囲はできていると判断します。大切なのは、その時点でできているかどうかよりも、自分が思っているほと周囲はできていないとは考えておらず、むしろ、高い評価を付けていることを、客観的な指標と共に、話し合うことなのです。そして、いまできているレベルを向上させるためにどこを改善すべきかを確認し、次回からの講座に活かしていく。いわゆる、PDCAサイクルを回していくのです。

講座では最後のプレゼンテーションのときのみ、普段は関わらないスタッフも聴衆として参加します。そして参加者が人前で立派に発表している姿、成長に驚きます。自己肯定感の低い若者にこそ、客観的な“できている”が重要なのです。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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