そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

50-2

50-2
地域に若者の居場所はない
~図書館を子ども・若者の居場所に~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:
 更新:

平日昼間に若者がいられる場所は少ないと感じている毎日ですが、唯一、「ここは居心地がいいな」と感じているのが“図書館”です。

そこにいることにお金がかかりません。何時間いても料金請求されないというのは安心です。また、図書館には多様な世代がいます。平日昼間であっても、資料探しをしている社会人や受験勉強されている方もいますので、自分ひとりが世代的に浮いてしまうこともありません。そして何より、たくさんの書籍が自由に読めるので暇を持て余すどころか、充実した時間を過ごすことができます。もう一つ付け加えれば、この節電の夏に冷房がそれなりに効いています。

地域に居場所がなかなか見つからなくても、図書館という空間は非常に居心地がいいわけです。館員さんから不審者がられることもありません。職務質問を受けることもありません。さらに、自分が興味あるジャンルを伝えれば、受付の方がたくさんの推薦本を紹介してくれます。とても素敵な場所です。

私は、学校や社会に参加できない若者にかかわっていますが、今回の育休で「なぜ、彼らは昼夜逆転の生活をするのか」「どうして自宅にひきこもりがちになるのか」が少しだけ実感できたように思います。自意識過剰かもしれませんが、平日昼間にひとりで毎日行くことができ、安心・安全を感じられる場所が地域にとても少ないのです。

学校や職場、地域であっても自分の居場所を見つけられず悩む若者はたくさんいます。働いていても、土日のお休みに行く場所や遊びに行く友人がいないという声もよく聞きます。少子高齢化で若い世代が減りゆくなか、自治会など彼ら/彼女らをもっと巻き込みたい地域の方々にとってはチャンスであると私は思います。「何かあったらいつでも来い」ではなく、自然にふらっと誰もが寄れる地域の「場」が求められているように思います。

私はいっそ図書館のなかに地域機能の入口を集約してしまうことで、若者のみならず、居場所のなさを感じているひとびとが、地域に参加する足掛かりをつかみやすくなると考えています。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

新着記事 New Articles