そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

51-1

51-1
被災地貢献のカタチ
~現地に行けない若者たち~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
公開:
 更新:

東日本大震災から半年が経過し、復興の兆しがはっきり見える地域もあれば、まだまだ支援の手が届かずに苦しい状況が続いている地域もあります。ひとりの国民として微力であっても復興への協力、貢献を続けていきたいと考えています。

多くの社会人や学生が被災地に入り、炊き出しなど被災者のために行動し、津波が運んだ泥を自宅から撤去する泥出し作業に取り組むなど、いまも現地で活動されています。隣人の名前も知らない地域社会になってきているとか、助け合いの精神が“昔に比べて”希薄になっているなど、過去そうであった時代と比較をしていまの若者にいろいろな言葉が投げかけられます。しかし、自らの力を社会のために使いたいというひとたちは世代に関わらずたくさんいることに改めて社会は気づいたのではないかと思います。

その一方で、大変な被害を受けた地域や人々のために何か貢献したいと思っていても、環境や状況が現地に行くことを許さず、悶々とした気持ちで日常を過ごしている若者にたくさん出会います。

現地に行きたいのに「危ないから」という理由で保護者から許可をもらえない女子高生は、「同じ高校生が被災地でボランティア活動をしているのに、一緒に行くことができない自分が許せないんです」と語気を荒げて話してくれました。断続的に訪れる地震速報にわが子を心配する保護者の気持ちも理解できます。他方で、友人らが現地に続々と入っていくことを見ていることしかできない自分が情けなく感じることもまた共感できるところであります。

私がご支援差し上げている若者も現地での貢献を希望しながら、体調不良や心の病などにより被災地に駆け付けられないものがたくさんいます。ある男性は「普段、誰の役にも立っていないのだからこんなときくらいは…」と伏し目がちに話してくれました。きっと若者に限らず、さまざまな理由で現地の役に立ちたいけれども、という心情の方がいらっしゃると思います。私は仮に現地に行くことができなくとも、“いまいる場所”で貢献できる方法がたくさんあるのではないかと思っています。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

新着記事 New Articles