そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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被災地貢献のカタチ
~東京から被災地を支援する~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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現地に行くことができなくてもできる貢献で真っ先に浮かぶのは募金や物資の提供でしょう。私もJustGiving Japanという、誰でもネットを通じて寄付を募れるサイトを使って支援金を募りました。また、被災地のNPOと連携をして不足する物資の提供を呼び掛けたりもしました。少しでも寄与できればと思っての行動ですが、多くの方が募金などはされており、もう少し目に見える貢献を望んでいるのではないかと思います。

そんなとき私のNPOで働く社員から提案を受けました。「津波で流され汚れてしまった写真を洗い、アルバムに整理して持ち主に返す活動をされているところがボランティアを探しています」と言うのです。これなら東京でもできることだと早速連絡を取り、活動に参加させていただくことにしました。

ダンボールに入ったたくさんの写真は泥や埃にまみれており、その汚れを水で洗い、乾燥させてアルバムへ納めます。地味な作業ではありますが、一枚一枚の写真に家族旅行やピースサインで映る元気な子どもの笑顔があります。それぞれの写真がご家族のもとに帰ることを祈りながら手を動かします。

現地に行くことができない若者も、写真を洗っては乾燥の作業を繰り返すなかで“誰かの役に立てる自分”に安堵し、悶々とした感情が晴れていくことを実感します。彼らの、いつも以上に一生懸命な姿にはとても感銘を受けました。

この作業は一階オフィスのドア付近で行っているのですが、その前を通る地域の方々も「いったい何をしているのか」と足を止めて見学します。「よろしかったらご一緒にどうですか」と声掛けすると、喜んで作業に参加してくださいます。また、写真の郵送料はボランティアの持ち出しであることを知ると、お財布から大切なお金を出して「これを使ってください」とご寄付くださることもあります。

私は、被災地にて復興に寄与する方々を尊敬します。それと同じように、遠く離れた東京で一枚一枚の写真を丁寧に洗う方々も素晴らしい貢献であると考えます。被災地貢献には多様なカタチがあり、自らができることを地道に、丁寧に行っていくことが一刻も早い復興への手助けになると信じています。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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