そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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4月1日が来る前に
~周囲に伝えよう~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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高校や大学を卒業する、3月末日を持ってこれまで働いてきた職場を退職する。しかしながら、4月1日から行く場所が決まっていないがゆえに、この時期不安定な心境の若者がいます。

ある大学四年生が相談に来ました。卒業は決まっているものの、なかなか就職活動がうまくいかず、春からの職場が決まっていません。それでも一生懸命仕事を探し続けているので、このまま職場が決まらないと、学校はもちろん、アルバイト先もない状況で新年度を迎えることになります。

私は、仕事が決まらないことは不安で仕方がないのだろうと思っていたのですが、そうではありませんでした。社会的所属がなくなることが怖いというのです。これまでは「○○大学の工藤です」とか、「株式会社××の工藤と申します」と、自分の名前と所属先はセットでした。それがなくなったとき、自分の存在の半分を作ってきた場が消失してしまうわけです。

もちろん、これは新年度を迎えるときにだけ起こることではなく、自らいまの所属を離れるにせよ、所属先そのものがなくなってしまうことにせよ、比較的誰にでも起こりえることだと思います。特に後者は個人の力ではどうにもならないこともあるでしょう。

もし、4月1日から所属先がなくなってしまいそうな若者、または、いつそのような状況になってもいいように日頃から何かできることを探しているということであれば、ひとつ手軽にできることがあります。“過去に接点がしっかりあった”が、最近会っていない、話していないひとに自分の状況を知らせるということです。

わざわざ時間を取って相談に乗ってもらってもいいのですが、突然ですと相手も驚いてしまうかもしれません。電話でも構いませんが、より気楽に近況を報告するにはメールや手紙という方法もあります。

なぜ近況を周囲に伝えることが大切なのか。

それは、ひとはある個人(例えばあなた)が悩み、困っていることを簡単には知ることができないからです。100人に不安なことを伝えたら、そのうちのひとりくらいは解決のためのアイディアを持っているかもしれません。しかし、知らないことにはどうしようもありません。いきなり重い話をしたくないときには、挨拶程度の連絡で十分です。返事を返してくれたり、連絡をしてきてくれたりしたとき、思い切って悩みを打ち明けてみると、思わぬ助けが得られるかもしれません。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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