そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

70-2

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残る仕事、残らない仕事
~ひとでないとできない仕事とは~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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自動運転の「無人自動車」を実用化するといったニュースをよく目にします。車はひとが運転するものと思っていましたが、これが実現すると車、タクシー、トラック、バスなどに加え、さまざまな「乗り物」は、ひとが運転をしなくてもよくなります。運転免許はなくなるかもしれません。

自動車に限らず、身の回りでもこれまでひとが行っていたものが、無人になっているものに気がつきます。例えば、スーパーやコンビニでは、自分で商品バーコードを読み取り、支払いを済ませられるものが増えましたし、毎日使っている駐輪場も自分でお金を払って出し入れしています。いまでは切符を買うことも少なくなり、改札もカードで読み取るだけです。

これまではひとがいなければできなかったことも、いまではひとがいなくてもできる。つまり、そのような仕事はなくなる可能性が高い、もしくは、トラブルに備えて一人だけ部屋で待機しているようになるということです。工場などもロボット化が進み、巨大な工場でたくさんの製品が製造されているにも関わらず、そこにいるひとの数はごくわずかということも当たり前になってきています。

逆に、これから残っていく仕事はひとでないとできない、またはロボットでもできるけれどひとであったほうがよいものが残っていきます。ひとつは何かを「創る」ことが考えられます。「こんなものがあったらいいな」と想像したものを実際に「創造」することです。前回のコーディングが重要だと認識されているのはこれにあたるのでしょう。

また、レストランのウェイター/ウェイトレス、介護などはどうでしょうか。ロボットでもできそうですが、多くのひとが「やっぱりひとにやってほしい」と思いやすい仕事かもしれません。一方、これらのサービス業は一部の特別な仕事を除いて、アルバイトやパート、あまり高くない給与で働くひとが、いまは担っています。もちろん、このような仕事の価値(給与を含む)をあげていくことも重要かもしれませんが、そのためには現在のサービスに、より高いお金を支払うことになるかもしれません。誰もが「少しでも安く」と考えていたら難しいでしょう。

これからどのような仕事がなくなるのかはわかりませんが、なくなりそうな仕事は調べれば何となくわかります。また、なくならない仕事に就くためにはどのような知識や経験、技能や技術が必要かも調べると書いてあります(真意はともかく)。

一方、ひとでないとできない仕事を大切に残していかなければならないとしたら、それは一人ひとりがそのためにどうしたらいいのかを考え、ひとりの消費者以上の視点で発言や行動をしなければなりません。

少なくとも、いま目の前にあることは、20年後、30年後はかなり変化します。その変化に無関心でいるのではなく、想像力を働かせながら自分はどうしていきたいかを考えるというのはとても大切なことだと思います。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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