そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

77-1

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進路とお金を考える
~いつか一人暮らしをしたいのならば~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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高校を卒業後の進路が就職でも進学でも、それ以外の道を選ぶにせよ、少しだけお金のことも考えてみたでしょうか。認定NPO法人育て上げネットでは、金銭基礎教育プログラム「MoneyConnection®」というプログラムを全国の高校で行っています。これまで540校74,691名の高校生が受講しました(2014年11月30日現在)。

少なくない高校生が将来は親元を離れて一人暮らしをしたいと言います。一人暮らしをすればいまよりも自由な時間や自由な行動ができます。もちろん、その分、責任も発生しますが、友達と遅くまで話をしても帰宅後に怒られることもないですし、勉強しなさいと小言を言われることもなくなります。そういった意味から、一人暮らしに憧れを持っている高校生もいるのではないでしょうか。

MoneyConnection®を受講した約6,000名の高校生へのアンケート調査の結果を見ると、そもそも一人暮らしにどれくらいの費用(お金)がかかるのか教わった経験がないと答えた高校生は70%以上います。例えば、一か月の携帯電話にかかるお金はわかっても、スーパーで食材を買う場合にいくらかかるのか。駅から徒歩10分のワンルームで、近くにコンビニがあるアパートの家賃はどれくらいなのか。なんとなくこれくらいという想像はできても、具体的にどのような生活をしたら月にいくらかかるのかは実感しづらいものです。

同調査で1万人の高校生に聞いた「税金などの支払いについて考えた経験の有無」については、同じく70%以上の高校生が経験なしと答えています。確かに、親はあまり生活費について話をしないかもしれません。クレジットカードや引き落としが一般的となり、お財布からお金を出すシーンも減りました。学校の授業でもあまりお金について具体的に考える機会は増えていないそうです。つまり、知らないことや経験がないことは、むしろ当たり前とも言えます。

しかし、高校卒業後の進路がどうあれ、これからは今以上にお金を稼ぐ、使うことが増えてきます。しばらくは親が仕送りなどで出してくれるかもしれませんが、それは親が稼いだお金のなかから拠出してくれているものであり、家族という単位で考えればやはりお金は動いているわけです。

いつか実家を離れて一人暮らしをしたいのならば、いまのうち大体どれくらいのお金が必要にあるのかを知っておくことは無駄にはなりません。先ほど、自由を得る代わりに責任も発生すると書きましたが、必要なお金をどのように工面するのかについては責任の範囲に入ってくるものですので、先生や親に聞いてもよいですし、聞きづらいのであればインターネットなどで調べてみるというのはいかがでしょうか。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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