そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

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漫画からの学び
~部活がもっと面白くなる~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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本や新聞を読みなさいと言われることがあると思います。活字を追うのが好きであれば、誰に言われるともなく読むでしょう。しかし、なかなか読書の時間が取れなかったり、最初の一冊に手が出なかったりすることもあると思います。

私は、読書感想文の宿題を出すためというのを除くと、中学、高校時代はほとんど読書をしませんでしたが、好きだった漫画だけはたくさん読んでいました。大学に入学する際、父親から「なんでもいいから一年間で1,000冊読んだらいいよ」と言われたとき、「そんなに読めるわけないじゃん」と言い返しました。すると「雑誌でも漫画でもいい。新聞や書籍だけに限定する必要はないから」と助言を受けました。

最近の漫画は、ストーリーを考えるひとと、絵を描くひとがわかれているものも少なくありません。ひとりの漫画家が全部考えるのではなく、それぞれの得意なことを持ち寄って協力して作品を作るものもたくさん見かけます。

土日も休みなく、毎日遅くまでグラウンドや体育館で部活をしていると、疲れからなかなか読書しようとは思えないでしょう。大会で勝ち抜くため、自己記録を塗り替えるためなど、目標に向かって頑張っていると思います。活字を読むと眠気に襲われてしまうとしても、漫画なら、自分がやっている部活に関するものだったらどうでしょう。

最近の漫画には、気合と根性、友情によって奇跡の勝利を収めるものだけではなく、スポーツと身体の科学を掛け合わせたものや、試合に勝つ戦略や戦術をわかりやすく表現した漫画も少なくありません。サッカーであれば『フットボールネーション』(大武ユキ著)、テニスなら『ベイビーステップ』(勝木光著)、野球にも『おおきく振りかぶって』(ひぐちアサ著)など多数あります。

スポーツ科学やメンタルトレーニングなどの知見が取り入れられているため、純粋に“うまくなる”ための知識を獲得することもできますが、新しい視点や物事の考え方を知ることで、部活のみならず学校や日常の生活にも生かすことができます。そうなれば部活がもっと面白くなるはずです。

中学生や高校生自身はもちろんですが、ぜひ、子どもたちの成長を見守り、かかわっていく大人にも、「所詮、子どもが読むもの」と思わず、手に取ってみてほしいと思います。きっと新しい子育てや教育の視点に出会えると思います。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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