そこらへんのワカモノ

若年者就労支援などの活動を行う、認定NPO法人「育て上げネット」理事長の工藤啓氏とスタッフによるエッセー

83-2

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さりげなく優しい社会
~ヘルプマーク~

認定特定非営利活動法人 育て上げネット 理事長
工藤 啓(くどう・けい)
※組織名称、施策、役職名などは掲載当時のものです
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前回の「マタニティーマーク」の他に、「ヘルプマーク(リンク:東京都福祉保健局/ヘルプマーク)というものがあるのをご存じでしょうか。東京都福祉保健局が作ったもので、以下のように説明されています。

ヘルプマーク
義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、または妊娠初期の方など、援助や配慮を必要としていることが外見からは分からない方々が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を得やすくなるよう、作成したマークです。
(引用:東京都福祉保健局「ヘルプマーク」より)

二年前に作られた新しいもので、まだ私は見かけたことがありません。「ヘルプマーク」の意味は、外部からは見えない/見えづらい心身の状態のひとであることを、私たちみんながわかるようにし、援助や配慮をしやすくしていることです。

誰のために作られたかは一目瞭然、私たちがいま以上に他者に配慮し、必要に応じた助け合いができるようにするためです。このようなものを作ることはそれほど難しいことではありませんが、広く知られ、支え合いがここかしこで生まれ、誰もが過ごしやすい生活、生きやすい社会になっていくには、私たち自身の行動が大切になります。

もう20年前になりますが、部活で足の靭帯を損傷してギプスに松葉づえで生活をしたことがありました。傍から見てもわかりやすいものでしたが、電車に乗ればたくさんの方が座席を譲ってくれました。怪我をしていなければ、私が席を譲らなければならないような高齢の女性が優しく声をかけてくれたことが思い起こされます。

高齢であったり、怪我をされているひとに限らず、私たちはよく「困っているのではないか」と思うひとに出会います。本当に困っているのか、助けを必要としているのかはわかりませんので、「助けを申し出て失礼だったらどうしよう」と不安になることもあります。「マタニティーマーク」や「ヘルプマーク」のように、私たちが見えやすいような取り組みはとてもありがたいと思うと同時に、そのようなものがなくとも、失礼であったり、断られたりすることに不安にならず、笑顔でさりげなく「何か手伝えることありますか」と声をかけられる人間でありたいと思います。

認定特定非営利活動法人
育て上げネット 理事長
工藤 啓
1977年東京生まれ。2001年、若年就労支援団体「育て上げネット」設立。2004年5月NPO法人化。内閣府「パーソナルサポートサービス検討委員会」委員、文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員、埼玉県「ニート対策検討委員会」委員、東京都「東京都生涯学習審議会」委員等歴任。著書『大卒だって無職になる』(エンターブレイン)、『ニート支援マニュアル』(PHP研究所)、『NPOで働く-社会の課題を解決する仕事』(東洋経済新報社)ほか

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