87-2

外に出られなくなったら
~家族が外に出られない~


工藤 啓
更新:2016/05/02

最初にお伝えしたいのは、怪我や病気などを除くと、突発的に外出ができなくなるようなケースは多くないと考えます。適切なデータがないので経験的になってしまいますが、何かご本人にとって外出しづらい、したくない状況があり、「出たくない」が「出られない」状態にゆるやかに変容していきます。

もうひとつお伝えしたいのは、必ずしも御本人に明確な理由、解決可能な課題があるとは限らないということです。「なんとなく」ということもあるでしょうし、理由が複数あり、どれが一番かを決められないときもあるでしょう。そのため、「なぜ」「どうしたら」を突きつけられると困ってしまうこともしばしばです。

友人や知人の一声や、ちょっとした意識の変化で外出することもあれば、家族の関わり方が変化したことで気持ちが切り替わることもあります。その意味で、「こうしたらよい」という解答はありません。

その一方で、外に出られない状況が長期化し、何年、十何年と経っている場合、外出までのハードルが高くなってしまう傾向は見て取れます。家族との関係が取れていればいいのですが、普段は顔を合わせることもなく、やりとりが手紙やメールといった断絶状態になってしまっていると、慎重に時間をかけて関係構築をやり直す必要が生まれてきます。

前編でも書きました番組放送では、自室のドアを破壊して他者が介入するシーンが流されました。依頼したご家族は藁にも縋る思いであったかもしれませんが、一般的に考えれば、見知らぬ人間が暴力的に入室してくることを、結果論を含めて、「よし」とは考えられません。

第三者としての「支援団体」を活用することは選択肢としてあり得ますが、その場合は複数の団体をリストアップして検討すべきです。またご家族のみならず、御本人が支援団体への相談や依頼、家庭訪問や自宅付近に来られることに同意していることが大前提です。

私も支援団体のひとつではありますが、突然、支援団体を見定め、利用するというのは不安ではないでしょうか。ここでは二つの方法を提示しておきます。

ひとつは、複数の支援団体をリストアップし、よく調べるということです。この際のポイントは、自団体による説明会や発信情報だけでなく、例えば、行政などが主催するイベントで講師として呼ばれている場を選んで参加してみることです。都道府県や市区町村行政が設置した審議会や委員会、ネットワーク組織に名を連ねているかなども見てみましょう。

もうひとつは、「ひきこもり地域支援センター」など公的な機関にまず相談をし、そこから適切な支援機関を紹介してもらうものです。公的な機関であっても、ご家族からの情報だけでご本人に適切と思われる支援団体を紹介するのは簡単ではありませんが、それでも一定の不安解消、リスク低減にはなると思います。

最後に、相談先を探すとき、近隣地域の情報を集めがちです。近所であると外出しやすいと思われがちですが、地元から離れた場所を望むケースもあります。生活圏内はもちろんですが、インターネットなどを活用して圏外の情報も探してみてください。御本人が意を決することができるポイントがどこにあるのかはわかりません。むしろ、多様な選択肢を情報として持っておくことの方が大切になります。

■厚生労働省「ひきこもり対策推進事業」

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1