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巻き込まれないこと
~「みんな」というひとはいない~


工藤 啓
更新:2017/01/23

先日、センター試験が実施されました。これから大学受験なども本格化してきます。そして、数か月後にはたくさんのひとが、大学や短大、専門学校などに通うようになります。高校を卒業すると、これまでよりも活動や行動の自由度が高まります。アルバイトや旅行、起業や留学など、これまでやりたくてもできなかったことにチャレンジできる機会が増えるでしょう。

これまでは親や学校が決めた枠組みで行動することが多かったと思います。その分、友人らとの共通経験も豊富に持っているのではないでしょうか。なんとなく「みんな」と同じであり、それに居心地の良さを感じるひともいれば、違和感を持つひともいると思います。

大学生や専門学校生は、卒業後の進路について視野を広げたり、就職について深く考えたりするために、実際の職場で短期間働いてみる「インターンシップ」に取り組むことが少なくありません。いまはインターンシップ先にNPOを希望する学生も増えましたが10年くらい前は、それが当たり前とは言えませんでした。

そんな中、ある大学生がインターンシップを希望してきました。とても聡明で、明るい性格の学生だった記憶があります。話をした限りにおいて、インターンシップで何か新しい経験をすることを楽しみにしているようでした。しかし、その学生がインターンシップに来ることはありませんでした。

なぜ、彼はNPOでインターンシップをすることをやめたのか。それは、「みんな」から理解されなかったからだということを後になって聞きました。「みんな」とは誰なのでしょうか。世界中のひとでしょうか、日本人全員でしょうか。その大学に通うすべての学生を指すのでしょうか。おそらく、その学生にとっての「みんな」は同じ大学に通う仲の良い数名から数十名の友人のことだと思います。

仲の良い友人がいるのは素晴らしいことです。しかし、自分が信じた、決めた道を数名から数十名に理解されないからといってあきらめてしまうのはもったいないと思います。社会には多様な価値観を持つひとがたくさんいて、毎日会う友達が全員ではありません。むしろ、その「みんな」との共通経験、思い出はたくさんあるからこそ、その「みんな」と離れた世界で新しい発見や経験を得られるかもしれません。

世の中には「みんな」というひとはいません。一人ひとりに意見があり、一人ひとりに価値観があります。その一人ひとりの中のひとりである自分自身にも意見や価値観があるわけですので、誰かよくわからない「みんな」、とても狭い範囲の中にいる「みんな」の言葉に耳を傾けながらも、なんとなく巻き込まれるのではなく、自分の信じた道を歩んでほしいと思います。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット
Lineup

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1