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変えようとする勇気
~言ってみる~


工藤 啓
更新:2017/05/01

自分が決めたり、作ったりしたわけではないけれど、学校や部活などで“なんとなくやることになっている”ことってありませんか? 高校時代はサッカー部だったのですが、練習後のグラウンド整備として片づけたり、トンボ(地面を平らにする用具)をかけたりするのは1年生の仕事でした。

「そんなもんなのかな」と思ってはみても、どう考えても全員でやった方が早く終わるわけです。1人で10個のことを終わらせるより、10人で1人1個終わらせた方が絶対早い。もちろん、専門家やプロしかやれないことであれば別ですが、グラウンド整備でやることは誰でもできるわけです。

みんなでやった方が早く終わるのでは、と先輩に言ってみたのですが、「そういうものだから」ということで会話は終了しました。納得できるものではなかったのですが、当時はそれを変えようとする勇気はありませんでした。2年生や3年生になっても、自分もやるくらいで、全体を変えようとは思わなかったのです。「そういうもの」に流されてしまいました。

昨年度、子どもたちが通う保育園で保護者の会の会長をやりました。皆さん、子育てと仕事で忙しく、時間をつくることも簡単ではありません。そこにも“なんとなくやることになっている”ことがいくつもありました。

毎年、保育園では夏祭りが開催されます。子どもたちや先生の出し物があり、保育園の思い出をビデオ映像で振り返ったりする素敵なイベントです。そこには子どもたちのための「出店」があり、ゲームをしたり、工作をしたりできます。子どもたちは大喜びです。保護者の会も出店をしています。しかし、出店すれば店番が必要となります。その間、自分の子どもとずっと遊ぶことができなくなってしまいます。

交代でやり繰りはしますが、子どもたちも親と遊びたいのです。「いまお店の担当だから待っていてね」と言っても、子どもにとっては寂しさだけが募ります。出店もたくさんありますし、保護者の会で出店はやらずに、自分の子どもと夏祭りを楽しんだ方がみんな楽しいのではないかと。

保護者の会の役員も同じ気持ちでした。そこで保育園の園長先生に話をしてみたら、笑顔で「保育園としてはまったく問題ありませんよ」と言います。そもそも保護者の会が夏祭りに出店するようになった経緯を誰も知りません。まさに、“なんとなくやること”になっていたのです。

いつ誰が始めたのかわからないが、ずっと行われているものをなくしたり、変えたりするのは簡単ではないこともあります。それによって困るひとがいれば変更はとても難しくなります。それでも、変えようとしてみるときに必要なのは勇気だけです。変わるか変わらないかはわかりませんが、誰かが言ってみなければそれは永遠に変わらない“なんとなくやること”として続いていくのです。

工藤 啓
くどう けい

特定非営利活動法人「育て上げ」ネット理事長。1977年6月2日東京生まれ。大学中退後渡米。帰国後、ひきこもり、ニート、フリーター等の就労支援団体「育て上げ」ネット設立。2004年5月NPO法人化、現在に至る。
2005年…内閣府「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」委員/厚生労働省「キャリア・コンサルティング導入・展開事例検討委員会」委員/文部科学省「中央教育審議会生涯学習分科会」委員/埼玉県「ニート対策検討委員会」委員/福島県「若者としごと」研究会アドバイザー/立川市教育委員会立川市学校評議員
著書「大卒だって無職になる」(エンターブレイン)、「ニート支援マニュアル」(PHP研究所)ほか

NPO法人「育て上げ」ネット

【2015年 掲載】
84 親とのコミュニケーション~76

【2014年 掲載】
75 もし自分だったらどうする?~67

【2013年 掲載】
66 一声かける勇気~60

【2012年 掲載】
59 進学と奨学金~53

【2011年 掲載】
52 非日常下の成長~46

【2010年 掲載】
45 卒後生活への不安~37

【2009年 掲載】
36 仕事につながるナナメの関係~28

【2008年 掲載】
27 学校を辞めるということ~19

【2007年 掲載】
18 仕事を変えるとき~9

【2006年 掲載】
8 感情と積極性~1