第21回

人は、ふれあって生きる
(前編)


久田 邦明
更新:2007/04/23

UR賃貸住宅(旧公団住宅)のテレビCMが面白い。これを教えてくれたのは、東京の下町で小学校の放課後開放事業を担う女の人で、PTA活動を熱心に続けてきた、とび職のおかみさんだ。

サイト(※公開終了)も教えてもらったので「おはよう編」と「大きな木の下で編」の2つのCMを観た。団地へ引っ越してきた若い夫婦と小学生の娘の話だ。

「おはよう編」は、小学生の女の子が1人で登校する場面から始まる。建物の通路やエレベーターや団地内の道で「おはよう」「おはようございます」と住民に挨拶をされる。その子は黙って通り過ぎる。首には防犯ブザーがぶら下がっている。

続いて夕食後の団欒の場面へ。「知らない人がね、皆おはようっていうんだよ。へんだよね、知らない人なのにね」と、娘が母親に伝える。すると、台所の母親は「ちょっと、ここ、面倒くさそうね」と、父親に語りかける。テレビを観る父親は気のない返事だ。翌朝、出勤する父親は隣人の挨拶に、一拍置いて応える。

「大きな木の下で編」は、娘とおばあさんが砂場で遊ぶ姿から始まる。手前のベンチで母親が見守る。その脇にもう1人、ベビーカーの乳児を連れた母親がいる。彼女は微笑みながら「不思議ですよね、知らない人が遊んでくれるのって。ちょっと心配でもある」と語りかける。生返事の相手に「案外良いものよ、ときどきちょっと面倒くさいけど」と付け加える。場面が変わると、女の子と男の子が元気に虫取りをする姿が映し出される。

両方とも最後に、「人は、ふれあって育つ。UR賃貸住宅」の文字とことばがかぶさる。

紋切り型の“あいさつ運動”だけしか知らなかったわたしは、うーんと唸った。

《つづく》

久田 邦明
ひさだ くにあき

首都圏の複数の大学で講義を担当している。専門は青少年教育・地域文化論。この数年、全国各地を訪ねて地域活動の担い手に話を聞く。急速にすすむ市場化によって地域社会は大きく変貌している。しかし、生活共同体としての地域社会の記憶は、意外にしぶとく生き残っている。それを糸口に、復古主義とは異なる方向で、近未来社会の展望を探り出すことが可能ではないかと考えている。このコラムでは、子どもから高齢者まで幅広い世代とのあいだの〈世間話〉を糸口に、この時代を考察する。

Lineup

【2010年 掲載】
第78回 青年団が教えてくれること
〜第65回 大学をユースセンターへ

【2009年 掲載】
第64回 コミュニティビジネスの希望
〜第49回 地域で子どもを育てるスポーツ少年団

【2008年 掲載】
第48回 子どもの貧困
〜第33回 生涯学習を学ぶことの効用

【2007年 掲載】
第32回 期待されていない若者たち
〜第17回 地域文化の力

【2006年 掲載】
第16回 いじめをどうする
〜第1回 大学って何?