第36回

若者を地域の担い手に
(後編)


久田 邦明
更新:2008/02/18

最近、滋賀県米原市の米原公民館が、社会教育関係者のあいだで話題になっている。

それはこういうことだ。米原市内の複数の公民館に指定管理者制度が導入された。その1つの米原公民館では、特定非営利活動法人FIELDが引き受けることになったのだが、このNPOは、何とメンバー全員が20代の若者だ。NPOの代表で館長に就任したのは24歳の女性。わたしが話を聞いた事務局長は、市役所を退職した27歳の男性。1年間、1,700万円で受託したという。

これを機に、公民館は大きく変わったという。ロビーの中央に畳を敷いて和やかな雰囲気にした。利用者のなかから講師をみつけて講座を開催した。公民館が親しみやすいところになったので利用者も増加した。なかでも、子どもや若者の利用が増えたという点が注目される。なるほど、これまで公民館は中高年のスタッフによって運営されてきた。退職した校長先生が館長のところも珍しくない。当然にも利用者は高齢者に偏ることになる。

これが実現したのは、若者たちだけの力ではないだろう。1980年代、旧米原町の時期に公民館の誕生に尽力した地域住民の力が大きな支えとなったのではないかと、わたしは想像する。住民が自分たちの地域を若い世代に託すという見識を示したといえるのではないだろうか。

フルタイムで働く事務局長の年収は、市役所勤務のときよりも減って、二百数十万円だという。運営費用を確保するために、NPOの共同事務所を受け入れたり、文部科学省の事業を引き受けたりするなどの工夫もしているそうだが、その雇用形態は公務員モデルとはかけ離れている。この職場は、若者が次のステップへすすむための経験の場とみるべきものだろう。

賃金は決して満足できるものではない。昇給もそれほど期待できそうにない。それでもこの事例に希望をみる気がするのは、地域を担う若者たちへの期待があるように思えるからだ。

久田 邦明
ひさだ くにあき

首都圏の複数の大学で講義を担当している。専門は青少年教育・地域文化論。この数年、全国各地を訪ねて地域活動の担い手に話を聞く。急速にすすむ市場化によって地域社会は大きく変貌している。しかし、生活共同体としての地域社会の記憶は、意外にしぶとく生き残っている。それを糸口に、復古主義とは異なる方向で、近未来社会の展望を探り出すことが可能ではないかと考えている。このコラムでは、子どもから高齢者まで幅広い世代とのあいだの〈世間話〉を糸口に、この時代を考察する。

Lineup

【2010年 掲載】
第78回 青年団が教えてくれること
〜第65回 大学をユースセンターへ

【2009年 掲載】
第64回 コミュニティビジネスの希望
〜第49回 地域で子どもを育てるスポーツ少年団

【2008年 掲載】
第48回 子どもの貧困
〜第33回 生涯学習を学ぶことの効用

【2007年 掲載】
第32回 期待されていない若者たち
〜第17回 地域文化の力

【2006年 掲載】
第16回 いじめをどうする
〜第1回 大学って何?