第56回

子どもがいる暮らしの支援
(後編)


久田 邦明
更新:2009/06/29

最近、子育て支援を続ける人の活動報告を聞く機会があった。彼女は子育て支援の活動の先駆者であり、数年前からは商店街組合事務所2階にコミュニティ・カフェを開いて活動を続けている。

何よりもまず第一に注目したのは、自分たちの課題は、子どもや母親の支援というよりも「子どもがいる暮らしの支援」であると強調したことだ。下手をすると子育て支援はその意図に反して親を追い詰めるだけのものになりかねない。それを忌避するのだろう、自分たちの活動は「子育て中じゃない人がターゲット」であり、「関係ないわ、という人に届くことば」を考えているというのである。

子育てカフェではなく、コミュニティ・カフェという名称を選んだのも、このような考え方によるという。これを理解した会場の参加者が、自分たちのところの名称が決まったと発言したのが印象に残った。

「(母親は)子育てをするようになると一気に自信を失う」「子育て中の人は肩身が狭い」という話にも注目した。そういう母親には「まちへ出るだけで子どもたちに子育ての姿を見せることになって、社会の役に立つ」「まちのなかに自分の役割がある」ということを伝えるという。家に閉じこもらないで、まちへ出ることを勧めると共に、子育てが社会全体の課題であるということを、このようにして伝えるわけだ。

その一方で、子育てに役立つ地域のマップづくりでは、こちらがサービスの提供者になるのを避けて、自分たちの地域のマップづくりは自分たちの手でやって欲しいと伝えるという。請負型ではない、問題提起型の活動スタイルを採るわけだ。

子育て中の母親に向けて「一人じゃないよ! でも一人だよ。」と語りかける、その人の詩的なことばに、いささか大袈裟な表現になるかもしれないが、後期近代の共同性への志向が読み取れると、わたしは考えた。

久田 邦明
ひさだ くにあき

首都圏の複数の大学で講義を担当している。専門は青少年教育・地域文化論。この数年、全国各地を訪ねて地域活動の担い手に話を聞く。急速にすすむ市場化によって地域社会は大きく変貌している。しかし、生活共同体としての地域社会の記憶は、意外にしぶとく生き残っている。それを糸口に、復古主義とは異なる方向で、近未来社会の展望を探り出すことが可能ではないかと考えている。このコラムでは、子どもから高齢者まで幅広い世代とのあいだの〈世間話〉を糸口に、この時代を考察する。

Lineup

【2010年 掲載】
第78回 青年団が教えてくれること
〜第65回 大学をユースセンターへ

【2009年 掲載】
第64回 コミュニティビジネスの希望
〜第49回 地域で子どもを育てるスポーツ少年団

【2008年 掲載】
第48回 子どもの貧困
〜第33回 生涯学習を学ぶことの効用

【2007年 掲載】
第32回 期待されていない若者たち
〜第17回 地域文化の力

【2006年 掲載】
第16回 いじめをどうする
〜第1回 大学って何?