第92回

社会問題としてのひきこもり
(後編)


久田 邦明
更新:2014/03/03

昨年、相次いで、年齢幅を広くとった、ひきこもりの調査報告書がまとめられた。

東京都町田市保健所では、20〜64歳のひきこもりの実態を明らかにする調査報告書をまとめた。そのなかの、2,000人の市民を対象としたこの調査では、回答者自身または家族がひきこもりの状態にあるという回答が5.5%、近所の人、親戚・知人にひきこもりの状態の人がいるという回答が23.7%だった。

山形県子育て推進部も調査報告書をまとめている。民生委員・児童委員や主任児童委員へのアンケートでは、15歳以上のひきこもりの割合は0.14%だが、そのうち40代以上が45%と、年齢構成の実態について考えさせられる結果となっている。

山形市で活動する、NPO法人ぷらっとほーむの『ぷらっとほーむ通信』(126号/2013年10月)では、山形県の調査結果を紹介し、次のように述べている。

「調査結果から言えるのは、『ひきこもり』の高齢化というよりはむしろ、『ひきこもり』の偏在化ではないかと思われる。若かった『ひきこもり』たちが歳を重ねたというより、『ひきこもり』のようなありかた――社会的孤立――があらゆる年代や属性の人びとのうちに見出されるようになった、ということではないのか。」

現場からの実態報告といえるだろう。

30代までを対象とした厚生労働省や内閣府などの調査では、推計値で1〜2%とされている。この推計値をめぐる問題はさておくとして、30代までに限定する、ひきこもりの捉え方そのものを再考する必要があるのだ。今や、ひきこもりは、若者の成長過程のつまずきの一つではなく、社会問題だということが明らかになってきているからだ。さて、それでは、社会問題としてみるとは、どういうことなのか。

藤里町社会福祉協議会事務局長の菊地まゆみは、「彼らのパワーを引き出すことが出来れば、この街はまだまだ変わる、活性化できる。引きこもり者のパワーで、町づくりができるのだと、希望が膨らんでいくのを抑えられない」(前掲書)と記し、ひきこもり支援を地域社会の再生のための活動と捉えている。このような指摘が糸口となるだろう。

久田 邦明
ひさだ くにあき

首都圏の複数の大学で講義を担当している。専門は青少年教育・地域文化論。この数年、全国各地を訪ねて地域活動の担い手に話を聞く。急速にすすむ市場化によって地域社会は大きく変貌している。しかし、生活共同体としての地域社会の記憶は、意外にしぶとく生き残っている。それを糸口に、復古主義とは異なる方向で、近未来社会の展望を探り出すことが可能ではないかと考えている。このコラムでは、子どもから高齢者まで幅広い世代とのあいだの〈世間話〉を糸口に、この時代を考察する。

Lineup

【2010年 掲載】
第78回 青年団が教えてくれること
〜第65回 大学をユースセンターへ

【2009年 掲載】
第64回 コミュニティビジネスの希望
〜第49回 地域で子どもを育てるスポーツ少年団

【2008年 掲載】
第48回 子どもの貧困
〜第33回 生涯学習を学ぶことの効用

【2007年 掲載】
第32回 期待されていない若者たち
〜第17回 地域文化の力

【2006年 掲載】
第16回 いじめをどうする
〜第1回 大学って何?