第25回

2007-07-23UP

若者は故郷をめざすか(前編)


久田 邦明

「子どもの貧困」
第47回 前編 / 第48回 後編

「地域の声は、届かない」

第45回 前編 / 第46回 後編

「大学は難しい」

第43回 前編 / 第44回 後編

「子どものころ、世話になった大人」

第41回 前編 / 第42回 後編

「団塊世代の地域デビュー」

第39回 前編 / 第40回 後編

「昭和30年代は良い時代だったのか」

第37回 前編 / 第38回 後編

「若者を地域の担い手に」

第35回 前編 / 第36回 後編

「生涯学習を学ぶことの効用」

第33回 前編 / 第34回 後編

「期待されていない若者たち」

第31回 前編 / 第32回 後編

「ケータイと新老人」

第29回 前編 / 第30回 後編

「ケータイという道具」

第27回 前編 / 第28回 後編

「若者は故郷をめざすか」

第25回 前編 / 第26回 後編

「二つの放課後」

第23回 前編 / 第24回 後編

「人は、ふれあって生きる」

第21回 前編 / 第22回 後編

 まるで他人事のようにして講義を聴く学生たちも、若者の就労支援というテーマには関心をもつようだ。卒業後の進路は身につまされる問題だからだろう。

 学生の関心についてはさておき、わたしの問題意識からしても、青少年教育や青少年育成について語るとすれば、若い世代の将来の生業について言及しないわけにはいかない。そうでなければ観念的なお説教に終わるからだ。

 そういうわけで、このテーマの講義では、若者のための就労支援の施設や団体、社会教育事業のプログラムなどを紹介する。市民活動団体によるインターンシップを取り上げることもある。

 ただし教師は油断していられない。学生に評判の良いのは、ゲスト講師の体験談や4年生の就活報告のようだ。最近、女子大の講義に招いた20代女性の職業遍歴の話に「今日の講義が一番良かった」という学生の感想文があった。わたしのそれまでの講義は何だったのだろうかと思ったが、まあ仕方がない。

 若者の就労支援といえば「何のために、どんな仕事をするか」という基本的な問題を避けて通るわけにはいかないだろう。この問題を考えるために、続いて地域社会の活性化に貢献するコミュニティビジネスについて紹介することにしている。

 富山市の商店街組合は、若者に起業のためのプログラムを提供して成果を挙げたという。熊本市の工務店主は、若者の希望に応えて商店街の空き店舗を改築、開店した店のマネジメントまで引き受けている。住宅地に点在する耕作地を利用して農業経営を成功させた名古屋市の農業主は、若者たちを雇用して経営方法を伝授している。静岡市では、起業支援の達人といわれる人物が地元の若者たちの事業を応援している。

 もちろん上手くいく事例は少ない。そんなことは先刻承知の学生たちは企業や役所への就職を希望するわけだが、もう一つの選択があることを知るのも無駄なことではないだろう。


久田 邦明
ひさだ くにあき

首都圏の複数の大学で講義を担当している。専門は青少年教育・地域文化論。この数年、全国各地を訪ねて地域活動の担い手に話を聞く。急速にすすむ市場化によって地域社会は大きく変貌している。しかし、生活共同体としての地域社会の記憶は、意外にしぶとく生き残っている。それを糸口に、復古主義とは異なる方向で、近未来社会の展望を探り出すことが可能ではないかと考えている。このコラムでは、子どもから高齢者まで幅広い世代とのあいだの〈世間話〉を糸口に、この時代を考察する。