第36回

2008-02-18UP

若者を地域の担い手に(後編)


久田 邦明

「子どもの貧困」
第47回 前編 / 第48回 後編

「地域の声は、届かない」

第45回 前編 / 第46回 後編

「大学は難しい」

第43回 前編 / 第44回 後編

「子どものころ、世話になった大人」

第41回 前編 / 第42回 後編

「団塊世代の地域デビュー」

第39回 前編 / 第40回 後編

「昭和30年代は良い時代だったのか」

第37回 前編 / 第38回 後編

「若者を地域の担い手に」

第35回 前編 / 第36回 後編

「生涯学習を学ぶことの効用」

第33回 前編 / 第34回 後編

「期待されていない若者たち」

第31回 前編 / 第32回 後編

「ケータイと新老人」

第29回 前編 / 第30回 後編

「ケータイという道具」

第27回 前編 / 第28回 後編

「若者は故郷をめざすか」

第25回 前編 / 第26回 後編

「二つの放課後」

第23回 前編 / 第24回 後編

「人は、ふれあって生きる」

第21回 前編 / 第22回 後編

 最近、滋賀県米原市の米原公民館が、社会教育関係者のあいだで話題になっている。

 それはこういうことだ。米原市内の複数の公民館に指定管理者制度が導入された。その1つの米原公民館では、特定非営利活動法人FIELDが引き受けることになったのだが、このNPOは、何とメンバー全員が20代の若者だ。NPOの代表で館長に就任したのは24歳の女性。わたしが話を聞いた事務局長は、市役所を退職した27歳の男性。1年間、1,700万円で受託したという。

 これを機に、公民館は大きく変わったという。ロビーの中央に畳を敷いて和やかな雰囲気にした。利用者のなかから講師をみつけて講座を開催した。公民館が親しみやすいところになったので利用者も増加した。なかでも、子どもや若者の利用が増えたという点が注目される。なるほど、これまで公民館は中高年のスタッフによって運営されてきた。退職した校長先生が館長のところも珍しくない。当然にも利用者は高齢者に偏ることになる。

 これが実現したのは、若者たちだけの力ではないだろう。1980年代、旧米原町の時期に公民館の誕生に尽力した地域住民の力が大きな支えとなったのではないかと、わたしは想像する。住民が自分たちの地域を若い世代に託すという見識を示したといえるのではないだろうか。

 フルタイムで働く事務局長の年収は、市役所勤務のときよりも減って、二百数十万円だという。運営費用を確保するために、NPOの共同事務所を受け入れたり、文部科学省の事業を引き受けたりするなどの工夫もしているそうだが、その雇用形態は公務員モデルとはかけ離れている。この職場は、若者が次のステップへすすむための経験の場とみるべきものだろう。

 賃金は決して満足できるものではない。昇給もそれほど期待できそうにない。それでもこの事例に希望をみる気がするのは、地域を担う若者たちへの期待があるように思えるからだ。



久田 邦明
ひさだ くにあき

首都圏の複数の大学で講義を担当している。専門は青少年教育・地域文化論。この数年、全国各地を訪ねて地域活動の担い手に話を聞く。急速にすすむ市場化によって地域社会は大きく変貌している。しかし、生活共同体としての地域社会の記憶は、意外にしぶとく生き残っている。それを糸口に、復古主義とは異なる方向で、近未来社会の展望を探り出すことが可能ではないかと考えている。このコラムでは、子どもから高齢者まで幅広い世代とのあいだの〈世間話〉を糸口に、この時代を考察する。