ドリコムアイ.net…高校生の進路と教育を考えるWebマガジン
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第54回

2009-04-13UP

若者の地元志向(後編)


久田 邦明

「ホワイトキャンバスの10年」
第71回 前編 / 第72回 後編

「地域社会は再生する」

第69回 前編 / 第70回 後編

「講義について考えた」

第67回 前編 / 第68回 後編

「大学をユースセンターへ」

第65回 前編 / 第66回 後編

「コミュニティビジネスの希望」

第63回 前編 / 第64回 後編

「青少年施策を考える」

第61回 前編 / 第62回 後編

「大学生はコンビニで高齢者と出会う」

第59回 前編 / 第60回 後編

「ピアサポート委員会の活動」

第57回 前編 / 第58回 後編

「子どもがいる暮らしの支援」

第55回 前編 / 第56回 後編

「若者の地元志向」

第53回 前編 / 第54回 後編

「高校生世代という捉え方」

第51回 前編 / 第52回 後編

「地域で子どもを育てるスポーツ少年団」

第49回 前編 / 第50回 後編

「子どもの貧困」

第47回 前編 / 第48回 後編

「地域の声は、届かない」

第45回 前編 / 第46回 後編

「大学は難しい」

第43回 前編 / 第44回 後編

「子どものころ、世話になった大人」

第41回 前編 / 第42回 後編

「団塊世代の地域デビュー」

第39回 前編 / 第40回 後編

「昭和30年代は良い時代だったのか」

第37回 前編 / 第38回 後編

「若者を地域の担い手に」

第35回 前編 / 第36回 後編

 若者が自分の生まれ育ったところで地道に暮らしていこうと考えるのは間違っていない。しかし、これを実現させる道は険しい。若者を受け入れる条件が現在の地域社会の暮らしに備わっていないからだ。

 そもそもカネを稼ぐための雇用が少ない。有効求人倍率が「1」に達するのは全国の都道府県のなかで東京都だけだというではないか。家業の後継者を考えても、多くの中小事業主がすでに廃業してしまっている。金融機関からの借入金の辻褄合わせをして綱渡りを続けている事業主も少なくないらしい。

 このように地域社会の現状は厳しいが、90年代に育った世代は、この現状も織り込み済みなのかもしれない。消費生活という枠組みを取り外せば、現金収入の金額と生活レベルは比例するわけでもない。消費社会に首まで浸かった、これまでの暮らし方を括弧にくくって現状を見直せば、そこに可能性がみえないわけでもないだろう。

 1960年代の小商店主などのことを振り返ってみても、現金収入がそれほどあったとは思えないが、それにもかかわらず、地域の生活共同体の名残を足場として何とか暮らしていくことができたのである。

 そうはいっても昔のことを懐かしがっていても仕方がないし、現状を楽観するわけにもいかない。そこにリアルな壁として立ちはだかるのは、昔の資産価値を忘れることのできない人々の存在だろう。彼らは、時代の変化に対応した資産運用ができなくて戸惑い、立ち止まっている。商店街でシャッターを下ろしているのは、それだけの余裕のある、資産運用の欲張りたちだという見方もできるのである。彼らに後押しされる行政も同類だろう。

 地元志向の若者たちのあいだでは、地元つながりと呼ばれる人間関係に着目して、助け合って暮らす姿もみられるという。かつて生活共同体が引き受けていた条件が、地元つながりというかたちで再生しているのかもしれない。




久田 邦明
ひさだ くにあき

首都圏の複数の大学で講義を担当している。専門は青少年教育・地域文化論。この数年、全国各地を訪ねて地域活動の担い手に話を聞く。急速にすすむ市場化によって地域社会は大きく変貌している。しかし、生活共同体としての地域社会の記憶は、意外にしぶとく生き残っている。それを糸口に、復古主義とは異なる方向で、近未来社会の展望を探り出すことが可能ではないかと考えている。このコラムでは、子どもから高齢者まで幅広い世代とのあいだの〈世間話〉を糸口に、この時代を考察する。