第55回

2009-06-22UP

子どもがいる暮らしの支援(前編)


久田 邦明

「講義について考えた」
第67回 前編 / 第68回 後編

「大学をユースセンターへ」

第65回 前編 / 第66回 後編

「コミュニティビジネスの希望」

第63回 前編 / 第64回 後編

「青少年施策を考える」

第61回 前編 / 第62回 後編

「大学生はコンビニで高齢者と出会う」

第59回 前編 / 第60回 後編

「ピアサポート委員会の活動」

第57回 前編 / 第58回 後編

「子どもがいる暮らしの支援」

第55回 前編 / 第56回 後編

「若者の地元志向」

第53回 前編 / 第54回 後編

「高校生世代という捉え方」

第51回 前編 / 第52回 後編

「地域で子どもを育てるスポーツ少年団」

第49回 前編 / 第50回 後編

「子どもの貧困」

第47回 前編 / 第48回 後編

「地域の声は、届かない」

第45回 前編 / 第46回 後編

「大学は難しい」

第43回 前編 / 第44回 後編

「子どものころ、世話になった大人」

第41回 前編 / 第42回 後編

「団塊世代の地域デビュー」

第39回 前編 / 第40回 後編

「昭和30年代は良い時代だったのか」

第37回 前編 / 第38回 後編

「若者を地域の担い手に」

第35回 前編 / 第36回 後編

 しばらく前に住民施設を訪ねたときのことだ。スタッフからこんな話を聞いた。オープン間もないその施設で乳幼児と母親の集まりを始めた初日、そこに集まった人たちは携帯電話をいじるばかりで隣同士で話をしようとしなかったという。井戸端会議ということばも死語になってしまったのだろうか。

 そうはいっても、その一方で、30代・40代の女性たちを中心メンバーとする、子育て支援グループが各地に数多く誕生している。わたしの限られた知見の範囲でも、特定非営利活動法人びーのびーの(横浜市)、特定非営利活動法人わははネット(高松市)、特定非営利活動法人せたがや子育てネット(世田谷区)などをあげることができる。

 これらのグループには以下のような注目すべき特徴がある。

 第一に、行政に対する要求型ではなく提案型の活動を目指していることだ。自分たちの活動を積み重ねた上で行政に施策の提案をするという方法であり、そのためだろう、全国規模のネットワークには厚生労働省や地方自治体の職員も参加して積極的に発言している。

 第二に、イデオロギーによる結びつきではなく、解決すべき課題を共有することを通してつながっていることだ。メーリングリストのやり取りも具体的な活動が中心で、理念先行の議論は慎重に避けられている。

 第三に、深刻な問題を抱える孤立した親子への視点をもっていることだ。英国のホームビジティングというプログラムなどを参考に、行政と協力して乳幼児のいる家庭を訪問する事業を始めてもいる。

 この一年余り、びーのびーのや特定非営利活動法人グリーンママ(横浜市)などのメンバーは「協働契約のあり方を考える研究会」(横浜市の「政策の創造と協働のための横浜会議」のプロジェクト)を組織して、行政とのあいだの契約関係について検討している。これは、子育て支援の分野にかぎられない市民活動全体の課題を追究する作業として特筆されるべきものだろう。




久田 邦明
ひさだ くにあき

首都圏の複数の大学で講義を担当している。専門は青少年教育・地域文化論。この数年、全国各地を訪ねて地域活動の担い手に話を聞く。急速にすすむ市場化によって地域社会は大きく変貌している。しかし、生活共同体としての地域社会の記憶は、意外にしぶとく生き残っている。それを糸口に、復古主義とは異なる方向で、近未来社会の展望を探り出すことが可能ではないかと考えている。このコラムでは、子どもから高齢者まで幅広い世代とのあいだの〈世間話〉を糸口に、この時代を考察する。