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端的に言ってしまえば、2004年6月に起きた女子小学生による同級生殺人事件を解き明かしていくものだ。ただし、その射程範囲はきわめて広い。もちろん、学校をメインテーマに据え、そこにおける学びが制度的意味に絡め取られ、現実に生きるために必要なものではなくなり、互いに「共有の世界」がなくなり、テストクラシーに陥っている現状をきわめて理論的に整然と描き出したものである。
ただし、その範囲はこの事件や学校のヴァーチヤリティにとどまらず、「いま」を生きるのではなく、「将来」のために「いま」を封殺せざるをえない人間の、文化のあり方にまで遡って、根底的に問い直されている。学校的コミュニケーションが、「議論ごっこ」に陥り、リアルな意味を失っていく過程、あるいは冤罪犯罪者などが進んでついてしまう嘘などが精緻に分析されている。またメインテーマではないが、家族の持つ機能がかつての共同体から、第3次産業化されていることひとつとっても、綿密な考察が繰り返されている。著者は心理学者だが、いわゆる昨今言われる「心理学主義」とは、まったく反対の「知のクロスオーヴァー」をひとりでなしている。
子どもが本当に変わってしまったのかどうかが、最初のスタートラインだったようだが、単に大きすぎたり小さすぎたりする尺度を持ちだして、一刀両断に変わった、変わらないというのではなく、当該地点にまで降りて検証していくという様はまさに「共通知をひらく」に相応しい。
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竹村 洋介
たけむら ようすけ
東京大学文学部社会学科卒業、同大学院教育学研究科博士課程修了。専門は不登校、フリースクール、ひきこもり、NEET論など。NPO法人越谷らるご顧問理事を勤める。このように、現実の社会問題をフィールドワークする一方で、書評子としては、『ドリコムアイ』誌を中心にいくつかの雑誌でほぼ25年近くにわたり連載を重ねる。社会科学全般、社会学、教育学、心理学、経済学、政治学からはては精神医療にまでその広い守備範囲とし、日本児童青年精神医学会の評議員などをも勤めた。近畿大学では、社会学、生涯学習論などの講義をおこなっている。著書に『近代化のねじれと日本社会』(批評社)、『ひきこもり』、『学校の崩壊』(共著、ともに批評社)などがある。
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