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集合行為である社会運動の大著である。社会運動を研究する人、実践する人には必読の書となるであろう。ページ数も文献などをふくめると400ページ近く、値段も安いとはいえないが、2冊分と思えば頷ける額である。索引や文献集もしっかりしており、ちょっとした事典、文献集としても使えるほどである。
内容もフランス革命から現代のトランスナショナルな運動論まで、政治的機会、たたかいのレパートリー、フレーミング、動員構造、サイクル、そしてその多様な結末まで、網羅的に先行研究を整理し、体系的に位置づけられている。その意味でも基本的文献といえるであろう。最先端の研究でありながら、親切な注が多く付されているので、根気さえあれば、読みすすめられるように記されている。高校の世界史の知識で充分に読みこなせる構成となっている。注は、最後のページにまとめてあるのではなく、見開きの奇数ページの部分に、その都度ごとに書き込まれているので、ページを何度もめくったりしなくてよいのも親切な編集の仕方になっている。初学者でも、基礎から最先端の議論まで一気に理解可能になるように編集されている。
ただ、学術書であるため「敵手」というような日常では、あまり使われない訳語が使われている。しかし、それも読み進めていけば、自然と理解できるようになっている。これも正確な訳を期するためにこのような用語が使われているのだろう。また冒頭の凡例にも書かれているが、形容詞型や動詞型をふくめてcontentionを「たたかい」と訳し、struggleを「闘争」と訳すなど、統一的に記され、汎用的集合行動にモジュラーというルビをあてているのも一流の学術書の翻訳の証であろう。編年的にではなく、理論体系的に書かれているので、フランス大革命のあとに、対照としてヴェトナム反戦運動がぽんと出てきたりするのも、この本の面白さを増している。しかも、このような大規模な社会運動だけでなく、小規模な農民闘争なども取り上げられているのもこの本の魅力だ。もっともそのためにページ数が増えている感はあるが。
惜しむらくは、アメリカ合衆国とヨーロッパの運動は詳しく分析されているのに対し、アジア、アフリカ、南アメリカ、オーストラリアなどの事例は、最終の2章「トランスナショナルなたたかい」と「社会運動の未来」をのぞけば、あまり取り上げられていない。ガンジーの思想や中国の天安門事件が触れられている程度である。日本にいたっては、敗戦後の米問題が記されているだけで、全共闘運動も書かれていない。同時期に起きたフランス5月革命に相当のページ数をさいていることを思うと、欧米中心主義かとも思えてしまう。もっとも、そこまで記すとなると、この厚い本がさらに上下2冊ということになるであろうが。
いわゆる社会運動、あるいは、NGO、NPO、ボランティアに関心がある人はもちろんだが、それらにそれほど関心がないという人にもお奨めしたい。なぜなら、そのことによって、ますますグローバル化、トランスナショナル化する世界の中で自己の社会的な立ち位置が見えてくる名著だからだ。
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竹村 洋介
たけむら ようすけ
東京大学文学部社会学科卒業、同大学院教育学研究科博士課程修了。専門は不登校、フリースクール、ひきこもり、NEET論など。NPO法人越谷らるご顧問理事を勤める。このように、現実の社会問題をフィールドワークする一方で、書評子としては、『ドリコムアイ』誌を中心にいくつかの雑誌でほぼ25年近くにわたり連載を重ねる。社会科学全般、社会学、教育学、心理学、経済学、政治学からはては精神医療にまでその広い守備範囲とし、日本児童青年精神医学会の評議員などをも勤めた。近畿大学では、社会学、生涯学習論などの講義をおこなっている。著書に『近代化のねじれと日本社会』(批評社)、『ひきこもり』、『学校の崩壊』(共著、ともに批評社)などがある。
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