第7回

2006-06-26UP

『30日間マクドナルド生活』

マツモトケイジ 著
祥伝社

本体1200円+税

第20回 〜 第1回

第20回 『ジェンダーと社会理論』

第19回 『反戦ストリッパー白血病に死す』

第18回 『≪宮崎勤≫を探して』

第17回 『満鉄全史 「国策会社」の全貌』

第16回 『学校だけが人生じゃない』

第15回 『階級社会』

第14回 『何がおかしい』

第13回 『寄る辺なき時代の希望−人は死ぬのになぜ生きるのか』

第12回 『薬でうつは治るのか?』

第11回 『岸田秀最終講義DVD本』

第10回 『戦争で死ぬ、ということ』

第9回 『自傷行為〜私が私であるために〜』

第8回 『自分の居場所のみつけかた』

第7回 『30日間マクドナルド生活』

第6回 『社会運動の力 集合行為の比較社会学』

第5回 『社会学入門 人間と社会の未来』

第4回 『学問の力』

第3回 『そして、憲法九条は。』

第2回 『子どものリアリティ 学校のバーチャリティ』

第1回 書き出すにあたって

 関西のロックバンド、ロゴミントは、「残さず食べろの先生/あなたは僕たちと違って/10日ハンバーガーが続いたら/死んでしまうでしょね」と歌っているが、それを30日間やろうというのだから、本当に死んでしまうのだろうか? 遺著ではないので死ぬことはないだろうが、ぶくぶくに太ってしまうのだろうか。

 もちろん、この原案はモーガン・スパーロック監督の『スーパーサイズ・ミー』で、これを日本でやってみようというのがこの本の第1章だ。日本のマクドナルドにはスーパーサイズはないのでその部分の変更はあるが、基本的にマクドナルドだけで食事を済ましてしまおうという企画である。

 著者は1度だけ飲み会に出ているが、それ以外は、すべてマクドナルドで食事を済ましている。はたして、スパーロック監督と同じように、12Kg太り、10%体脂肪は増加するのか? 答えはここには書かない。ここに書いてしまうと、推理小説の犯人を先に言ってしまうのと同じことになるからだ。どうしても知りたい人は立ち読みで結論部分だけでも読めばいいだろう。

 この本の面白さはそこにあるのではない。ドキュメンタリー映画と違い、ブログという形式で日々その食生活と体調、体重、体脂肪を報告していくリアリティである。

 見た目より高カロリーであるフライドポテトをむしゃむしゃ食べ、最後はガーデンサラダに行き着くその実感なのだ。肉、肉、肉と食わされると、著者は、お米が食べたくなってしまう。いかにも日本人らしい感想をもらしている。本という形式なので、リアルタイムなドキドキ感はないが、その反面、30日間の変化を一気読みしてしまえるという面白さがある。

 第2章はカップ麺生活30日間である。これもカップ麺以外口にしないという生活を30日間続けるというもの。他のものはまったく食べずに、91食のカップ麺をいろいろ探し出してきて食べてみるのだ。日本発のカップ麺はいまや91種類をも超えてスーパー、コンビニにあふれ出しているのかと感心! カップ麺の事典としても使えるほどである。

 最終章は非常食のみで30日間、暮らしていけるかという実験。特に最初の2日間は水をもとらず実に苦しそうな書きっぷりである。阪神淡路大震災のことを思い出させてくれる。

 世界の食品メーカーは、かくもstrangeな食べ物を、世界中に広めてしまったのか。感心せずにはいられない。この世界食品資本主義が作り出す身体にいいとはいえないようなジャンク・フードが、スローライフに取って代わられる日はいったい来るのか?

 僕は、ハンバーガーを食べ、ダイエットコークを飲み、カップ焼きそばを食べながら、この本を読んで、その日は遠いのではないかと実感。「スカッと爽やか(毒入り)コカコーラ」なんて書いた人もいますしね。




竹村 洋介
たけむら ようすけ

東京大学文学部社会学科卒業、同大学院教育学研究科博士課程修了。専門は不登校、フリースクール、ひきこもり、NEET論など。NPO法人越谷らるご顧問理事を勤める。このように、現実の社会問題をフィールドワークする一方で、書評子としては、『ドリコムアイ』誌を中心にいくつかの雑誌でほぼ25年近くにわたり連載を重ねる。社会科学全般、社会学、教育学、心理学、経済学、政治学からはては精神医療にまでその広い守備範囲とし、日本児童青年精神医学会の評議員などをも勤めた。近畿大学では、社会学、生涯学習論などの講義をおこなっている。著書に『近代化のねじれと日本社会』(批評社)、『ひきこもり』、『学校の崩壊』(共著、ともに批評社)などがある。