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「階級」という概念は、ごく最近まで死語に近かったという。「一億層中流幻想」が、「階級」を見えなくしていたのだ。それが、にわかに格差社会がいわれるようになり、「階級」という概念が生き返ってきたのだ。
もちろん、古典的な形の資本家階級対労働者階級という形で復活したのではない。1970年代以降のプーランツァス、ローマー、ライトなどの研究を踏まえた上で、著者は、資本家、旧中間階級、新中間階級、労働者という4つの階級カテゴリーを提唱する。
これらの階級概念を用いながら、近年急速に広がりつつある格差、フリーター・無業者層(本書で使われている用語ではないが、いわゆる「プレカリアート」)という「アンダークラス」の問題を解明していくのが、本書の主目的である。
結論から言えば、これらの諸問題に対し新中間階級の労働時間の短縮から格差縮小へという基本戦略を提示する。基本的には、社会学の理論書である。
しかし、この本の面白さは、そういった格差縮小のための社会学的解決方法の提示だけにとどまらない。戦後、高度経済成長下において、下町からはい上がること、すなわち階級移動することの意味を映画『下町の太陽』や『いつでも夢を』を題材にしながら、分析してみたり、『巨人の星』『明日のジョー』『愛と誠』を著した梶原一輝の階級意識がどのように形成されていったのかというようなアイデンティティ論にまで広がりを見せている。難しい社会学的議論を抜きにしてこれらのエピソードだけを読んでみても充分に楽しめるボリュームを持っている。むしろこちらの方が面白いと感じる人も少なからずいるのではないだろうか。
そして、なにより皮肉めいて関心を呼ばざるえないのは、この格差社会の中、ホームレスと化した若者たちに「日払い相部屋休息箱」を提供する事業を展開しているエム・クルー社の社長が、竹中大臣(当時)から激励を受けているホームページの写真だろう。著者は、このページ(http://www.mcrew.co.jp/news/20050415.html)を評して「いわゆる『構造改革』を推進する政府と、フリーターをはじめとする下層労働者を食い物にし使い捨てる資本の間の共犯関係を、見事にビジュアル化している」と評しているが、皆さんはどう見られることだろうか。
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竹村 洋介
たけむら ようすけ
東京大学文学部社会学科卒業、同大学院教育学研究科博士課程修了。専門は不登校、フリースクール、ひきこもり、NEET論など。NPO法人越谷らるご顧問理事を勤める。このように、現実の社会問題をフィールドワークする一方で、書評子としては、『ドリコムアイ』誌を中心にいくつかの雑誌でほぼ25年近くにわたり連載を重ねる。社会科学全般、社会学、教育学、心理学、経済学、政治学からはては精神医療にまでその広い守備範囲とし、日本児童青年精神医学会の評議員などをも勤めた。近畿大学では、社会学、生涯学習論などの講義をおこなっている。著書に『近代化のねじれと日本社会』(批評社)、『ひきこもり』、『学校の崩壊』(共著、ともに批評社)などがある。
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